…の誓い

以前お題を頂いていた、ニャルまひものの「挙式編」
前編が書けたので投下させてもらいます。

完全な自己満・妄想の産物なのをご容赦下さい。
結婚

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

624 名前: 挙式 前編 [sage] 投稿日: 2014/06/06(金) 05:07:51.15 ID:dR+o7Gig
「結婚式……しようか」
ベッドから出た真尋が、そう言った。

ニャル子は一瞬。その言葉の意味を理解出来ず。
呆けたように夫の顔を見ていた。
夜のお勤めを果たした後の身体は汗だくで、赤く火照っている。
だが、彼女がみつめる彼の頬を染める赤さは、性交の余韻によるものだけではない。

「マジですか?」
「な、なんだよ。嫌なら……わぶ!」
ぬぅ……っと伸びた腕に頭を絡めとられた真尋は、そのままベッドに引きずり込まれる。

「ぷはっ!おいこら!急に……」
むちゅうと重ねあわさった唇。籍を入れてからというもの、
ニャル子は事あるごとにキスをかましてくる。
始めは照れと恥ずかしさで振りほどいていたそれも、いつからか真尋は自然に甘受するものとなっていた。

「ん……あむ。ん……」
真尋はニャル子の髪を撫で、更に深く口づけた。ニャル子の返事は聞かなくても分かった。
上唇が震える時は、ニャル子が嬉しい事があったときのキスだからだ。

「……幸せにするよ」
「もう、十分幸せですって……」
「じゃあ、やめとくか?」
「あん。もー……意地悪なんですから……んちゅ……」

キスの気持ち良さですっかり元気になった下半身をニャル子にあてがった。
下顎を突き出す様に吸い付くキスはおねだりのサインだ。
「お前は欲張りだもんな……んっ……んあ……」
「あん……真尋さんの愛なら、いくらでも入りますから……ね?」

「うくっ……ニャル子!」
肉壷に沈んでいく快感に膨張率が跳ね上がる。30分前に「もう出ない」
と言ったハズの熱が、ニャル子の中に大量に注がれていく。


625 名前: 挙式 前編 [sage] 投稿日: 2014/06/06(金) 05:10:15.97 ID:dR+o7Gig
高校を卒業した日。真尋とニャル子は、その足で婚姻届を出しに行った。
名実共に夫婦となった二人を祝福する声は身内だけで十分だった。

卒業後は就職をと申し出た真尋だったが、頼子とニャル子の強い勧めで大学までは卒業する事となった。
学費はアルバイトをして自分で出すと言うのが真尋の譲れない条件だった。
そして、真尋は世の中を知った。

古本屋のバイトをする真尋。バイト仲間の内でニャル子はちょっとした有名人だった。
ちょくちょく来ては、長居する銀髪碧眼の美少女と来ればまぁ無理もない。
事の発端は勇気ある若者がニャル子に話しかける口実に使った一冊の本による…。

「『小説を書こう』?」
鼻息も荒く、突き出されたその本のタイトルを真尋は読んだ。
「私、小説家になります!」
想像通りのその台詞に真尋は嘆息した。



そして、1年後。
20歳になった真尋は学生小説家としてデビューを果たした。


626 名前: 挙式 前編 [sage] 投稿日: 2014/06/06(金) 05:14:31.60 ID:dR+o7Gig
ビクンと跳ねたペニスがニャル子の最奥を叩く。
ニャル子は眉根を寄せ、声にならない快楽の声をあげた。
真尋はそのまま倒れる様にニャル子の胸に顔を埋める。
絶頂にわななく膣の締め付けに苦悶するが、痙攣する陰茎から出せるものはとっくに出し切っていた。

「ま、真尋……さん」
イった余韻で震える声。真尋の頭を撫でる手も震えていた。
「ニャル子のナカ……暖かい」
繋がったままどれくらいそうしていたか。真尋は、苦労してきつく絡む熱い肉ヒダのキスから抜け出した。
半月ぶりに出した精液はまだ半固形状のまま粘糸を垂らし、
激しいオルガスムの影響で未だに勃起の硬度は落ちていない。

「はうぅ、素敵です……」
ニャル子は潤んだ瞳で真尋に抱き着いた。
胸の高鳴りは止まず、愛しさと劣情で頭の中がくしゃくしゃだった。

「結婚式、誰を呼びましょうか……?」
「お前の好きにすればいいさ……」
「お義母様、お義父様、珠緒さんに、余市さん……」
家を離れて久しい。懐かしい名前と家族、真尋の心には郷愁にも似たものが溢れた。
ニャル子はその後もとつとつと、名前を挙げていく。

「……あいつら、今頃どうしているかな?」
真尋が髪を撫でると、ニャル子はすりすり頬をこすりつける。
猫の様甘える仕種。……そこに真尋は彼女の抱える一抹の寂しさを垣間見た。


627 名前: 挙式 前編 [sage] 投稿日: 2014/06/06(金) 05:17:23.81 ID:dR+o7Gig
新人賞の賞金額を見た真尋が筆を取ったのは、あるいは必然だったのかもしれない。
もともと読書が趣味であり、文系を専行していた真尋はアルバイト先の環境も相まって、
めきめきと文才を伸ばしていった。

「やはりサブカルチャーの創作において地球人に敵うものはいませんね~~」
早々にギブアップをしたニャル子は真尋の作品の良い読み手となった。
基本的に何を書いても大ウケする妻の姿。それが真尋にとって何よりも励みとなった。

都合四作目の応募で、真尋は入賞を果たした。
賞金と、入選作品の主催社からの刊行が決まった日。真尋はニャル子との挙式を決意した。


「ハスター君は今頃大忙しでしょうね……」
「……ん」
星に戻ったハス太は父親と和解し、今は父親の会社を手伝っているという。
時を同じく、地球を去ったルーヒー。
……きっとハス太の会社の前には毎日タコ焼きの香りが漂っているだろうと、真尋とニャル子は笑った。

「アト子ちゃんはきっと変わらずです」
「……ん」
「……あいつと……ポンコツは……」
「……ニャル子」


628 名前: 挙式 前編 [sage] 投稿日: 2014/06/06(金) 05:20:26.90 ID:dR+o7Gig
ニャル子が真尋と入籍するに当たって、惑星保護機構から下された指令は簡素だった。
『地球人として過ごすこと』

ニャル子は家族を含む宇宙人との関わりを絶たれた。

真尋が驚いたのは、この指令に異議を唱えたニャル子を説得したのが、
クー子だったことだ。

別れの日。卒業式が終わり、ハス太を見送った後。
幻夢境へと赴くクー子とニャル子が何を話したのかはわからなかった。
ニャル子はシャンタッ君が入ったカプセルをクー子に渡たし、
そしてクー子はニャル子のスカートに頭を突っ込み……その姿勢のまま脳天をコンクリートに打ち付けられていた。

新しい蕃神が完成するまで500年。
クー子は今も、地球人の知らないところで地球を守ってくれている。

「『ネットゲーム三昧』の間違いですよ」
苦笑する真尋。ニャル子は気まずそうに視線を逸らす。

真尋の為に、全てを失った妻。
真尋は彼女に改めて誓いを立てようと決めたのだ。

「……幸せにするよ……ニャル子」
真尋は再びそう言う。
「真尋さん……」
合わさる唇。
下唇が震えるときは寂しい時のキスだ。

その後、何度愛しあったのかは真尋にはわからなかったが
次の日の午前の講義を真尋は自主的に休講した。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

667 名前: 挙式 中編 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 03:00:14.52 ID:dtrwPua4
「八坂さん!そこっ……!駄目!」
真尋が首筋に舌を這わせると、ニャル子は電撃を喰らった様に身体を震えさせた。
白い手袋をはめたその手から名状しがたいバールの様なものが落ちる。
純白のウエディングドレスを纏ったその姿は、真尋が幾度も夢に見たどんな姿よりも美しい。
白いタキシードを着た真尋とのツーショットは紛れもなく新郎と新婦のそれである。
チャペルの祭壇の前でニャル子を抱きしめたまま真尋は、首筋から離した顔をニャル子の唇へ……。

「や!駄目……です」
ニャル子はその口づけを拒んだ。

無理矢理にでも……と思うもニャル子の瞳に、恐れと困惑を見た真尋はその口づけを胸元に落とした。
「ひあああ!」
腰が砕けるように膝を折るニャル子。真尋はその身体を支えると更に舌を胸の谷間に這わせた。

「なんで……八坂さんは敵……なのに」

ニャル子に拒絶される事に心臓がひしゃげる様な切なさが胸を満たす。
しかし、ニャル子の抵抗は激しさを失い、抱きしめただけで全身から力が失せている。
言葉とは裏腹に、ニャル子の全てが真尋を求めはじめていた。

ドレスの裾に忍ばせた指が手触りの良いストッキングを滑り奥へ。
ガーターベルトをなぞり、熱く湿りはじめたショーツに……。

「……愛してる」
「ひあ!う……!」

「一つになろう……」


668 名前: 挙式 中編 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 03:04:31.72 ID:dtrwPua4
数時間前

見惚れる真尋を正気付かせたのは付添人の余市の一言だった。
「ニャル子さん。幸せそうだね」
ベールの奥に見える上気した頬は優しい笑みを湛えている。
潤んだ瞳に射貫かれた心臓は、堪え難い高揚感を全身に走らせる。
生唾を呑む真尋の背中を親友の手が力強く押し出した。
花嫁の腕をとり、バージンロードを歩む。小さなチャペルの壇までの短い道程。
祝いの言葉は決して多くはない。

親族と友人だけを呼んだ結婚式は慎ましいものだった。

ニャル子とは取り寄せたカタログや雑誌を山のように積み上げて、結婚式のプランを語った。
とにかく派手でゴージャスなものから、珍妙なシチュエーションなものまで。
ニャル子が身振り手振りで話す内容はどれも飛び抜けて奇抜なものばかりだった。
そのことごとくを切って捨てる真尋のツッコミに大仰に嘆くニャル子の図が毎夜二人の寝室で延々と繰り返された。

真尋がその冊子を見つけたのは、ハワイの海でのスキューバ婚を一蹴した後のことだ。
迫り来る唇にニャル子用の肌触りの良い枕を叩き付けると、枕のカバーからそれがベッドに落ちた。
なんども読み返したのだろう、ヨレヨレになり、破けた表紙はセロテープで丁寧に繕われている。
ニャル子が拾うよりも早くそれを取り上げ、パラパラと頁をめくった真尋は「了承」とだけ言い、突き出された唇を奪ったのだった。


「おめでとうニャル子さん!ヒロ君!」
真尋の両親の前を過ぎる。満面の笑みを送る母と、何処か恥ずかし気な父。
ニャル子の横顔は母のノロケ話しを聞くときのいつもの羨望の顔だ。
真尋の両親が結婚式を挙げた場所。ニャル子はずっと前から、そこを契りの場として決めていたのだ。


669 名前: 挙式 中編 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 03:07:32.08 ID:dtrwPua4
異変が起きたのは誓いの言葉を交わし、雇われ牧師がリングピローを持ちあげたときだ。
普段はお互いに付けずに過ごしていたその指輪だが『ソレ』は明らかに違っていた。

「どうした?手に取らないのか?」
チャペルに響いたその声に反応したのは真尋とニャル子だけだった。
パイプオルガンの響きが途切れ、瞬間。暗転する世界。
ニャル子はベールを取ると、真尋を庇う様に牧師との間に歩み出た。

先程までの甘い雰囲気はどこえやら。一触即発の空気が張り詰めていた。
「いまの私は地球人。保護惑星の住民に手を出したら……わかっているんでしょうね?」
ニャル子の言葉は脅しではない。惑星保護機構の保護下にある惑星。
特に地球の住人に危害を加えたものの末路は良くて終身刑。大概は……。

だが、ニャル子の一挙手一投足に余裕は感じられなかった。
相手の放つオーラは惑星保護機構を恐れてはいない。……そういう『凄み』があるのだ。


「久しぶりだな妹よ」
瞬きする間もなく、牧師の顔が『替わって』いた。
「地球に嫁いだと言うのは本当の様だな」

「は?あんたのことなんて知りませんよ『野良ニャルラトホテプ』」

「……ふっ、まあ良い」
芝居がかった仕種をすると野良ニャルラトホテプはリングピローの上に置かれたものを放って寄越した。
「なんの真似ですか?」
真尋はニャル子の上を越えて飛んできたその二つのモノをしっかりと受け取る。

「私達の指輪はどこにやったんです?」
「返して欲しくば従って貰おうか」

真尋は手の中にあるものを見つめた。
重厚な皮張りの施された書物と、サインペンを。


670 名前: 挙式 中編 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 03:12:17.70 ID:dtrwPua4
「応援しています!」
真尋は義理の兄と握手を交わすと、困った顔でニャル子を見た。

呆れ顔のニャル子はただ肩を竦めて首を横に振った。

「いやぁ、脱走して密入星をした甲斐がありました!」
「は……はぁ……」


「あなたの本最高でした!サインください!」
そうニャル夫に直角に頭を下げられ、真尋は硬直した。
皮張りのブックカバーの下から現れたのは、一月前に刊行された真尋の著書だった。
贈呈用のサインなど書いたことのない真尋は、ただペンネームを書くだけしか出来ない。
脱力感の中で、それでも真尋の心中にはこうしている事の幸せが不思議と溢れた。
否、愛する妻が笑顔を堪えて不機嫌さを装う様に幸福を感じる事は、真尋にとって不思議でもなんでもないことだった。

「ほら、いい加減私達の指輪。返しなさいよ……兄さん」
「まぁ待て妹よ、サインの後は記念写真だ」
渡されたカメラを受けたニャル子は、思わずクスリと破顔した。


ファインダーを覗くニャル子。何事か囁いた兄。夫と、不出来な肉親とのツーショットにニャル子はシャッターを切った。

そして、轟音。
「てゆるぼ!!」
真尋は跳ね飛ぶ義兄の身体をただ茫然見送った。

「大丈夫か?」
「……危ないところだった」
ニャル夫の居た場所を燃える紅と、一陣の風とが駆け抜けた。


675 名前: >>670-671間抜け分 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 22:05:54.37 ID:dtrwPua4
ざわめきの中、搬送される牧師。

「……脱獄した凶悪犯を捕まえた。礼には及ばない」
「聞いていたよりも手応えがなかったな」
「あのなぁ、お前ら……」
真尋は呆れつつも、顔が綻ぶ事をとめられ無かった。

「結婚おめでとう。真尋、ニャル子」
「は、ハスターくん?いえ、これはサイクロンエフェクト……でも仮面が……」
「いまはこれが僕だよ。ニャル子ちゃん」
「むう……よもやハスター君にナデナデされる日が来ようとは……」
「……邪神(ヒト)は日々進化するもの」
「お前は何処も進化しなかったのな」
「……わたしには無限に続く明日がまだある」
遠い目をするクー子の胸は平坦だった。

「いい記念になりますよまったく……」
「……照れる」
「褒めてるんじゃねぇですよ」
「あー。でもよかったのか?」
「……護衛の為に保護惑星の住人に接触することは認められている」
「ん?でもそれって、まるで今日の事を知っていたような」
「………」
「……惑星保護機構たるものは情報には敏感でなくてはならない」
「あのなぁ、お前ら……」
真尋は先程と同じ台詞を口にした。


671 名前: 挙式 中編 [sage] 投稿日: 2014/07/15(火) 03:14:51.92 ID:dtrwPua4
「え~では、汝ニャル子サン。その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、真尋サンを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますですョ?」
「はい、誓います」
真尋は頭痛を堪えるので精一杯だった。

貧血で倒れた(事にした)牧師の替わりに、司祭役を申し出たのは暮井珠緒。
否、
「お前絶対にイス香だよな!?」
ヒソヒソと小声で叫ぶ真尋。
「な、なんの事だかさっぱりですョ~」
「お前たちは揃いも揃って……!」
「まぁまぁ真尋さん」
ニャル子になだめられた真尋はふぅと溜息。
「……お前はこんなんでいいのかよ?」
チラリと後ろを見る真尋。
いまや狭いチャペルは『関係者』で埋め尽くされていた。

また、溜息が漏れる。

「にへへ……」
「なんだよ」
「いいえ、なんでも」

「では、指輪の交換ですョ」
二人は青い髪の少女の持つリングピローから指輪を取ると、互いの指に通す。

「では、誓いのく、口づけですョ!」

半ばやけくそ気味にニャル子のベールをあげる真尋。
そして、
「いまですョ!幸せ光線最大出力をくらえ~~ですョ!」

冒頭に戻る。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

挙式編 最後です。

701 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:25:35.97 ID:Y3tbxCZw
「真尋さん!危ない!」
ニャル子は真尋を突き飛ばすと、いやにマンガチックな光線をその身に浴びた。

真尋はハス太に背を受け止められたまま、倒れ伏すニャル子と
くり抜いた聖書からとりだした、いやにマンガチックな光線銃を片手に放心状態の珠緒とを見た。

「しっかりしろ!八坂真尋!」
そう言われた真尋は、ヨロヨロと立ち上がると、クー子が介抱する妻の側にしゃがみ込む。
「……命に別状はない……」
規則的にその胸は上下し、顔色も悪くない。

「よかった……」
あまりの出来事に、良き事と思えるしきい値が低下した言葉だ。何も良くはない。

「は、はわわわ!」
そして、文字通り事の引き金を引いた当人が一番テンパっている。
「これは!状態異常光線銃!いつの間に幸せ光線銃とすり替えられていたですョ!」
「ああ、うん。後でそこのぬいぐるみに入れ」
非の無い友人の体ごとグーで殴り倒さない程度には、八坂真尋は冷静だった。

「状態異常って……RPGにある毒とか、痺れたりとかのアレか?」
スヤスヤと寝息を立てるニャル子には特に変化は見当たらない。
純白のドレスに身を包んで横たわるその姿はさながら魔法の国のプリンセスか…
「にへへへ……もう食べられませんよぅ……くふふふふ」
「ホントは起きてんじゃねぇだろうな」
「……グーはいけない。グーは」


702 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:28:33.35 ID:Y3tbxCZw
「……これは余興。皆を楽しませる為に練習していた」
振り下ろされたバールの様なものをバールの様なもので受け止めながら
クー子は式場で呆気に取られる面々にそう説明した。

「よくも兄さんを……!」
互いにエモノを振り回し火花をあげる様は確かにかくし芸の類にみえなくもない。

「はわわわ!一体どうしてこうなってるですョ?!」
「ああ、うん。あいつ、いつだったかに記憶を無くした事があったんだ」
目覚めたニャル子の様子を見た真尋は、ニャル子の被った『状態異常』の症状に直ぐに思い当たった。

「記憶喪失にしては随分とエキセントリックだね……」
「その時に騙されてな……僕達は敵だ!って」
「でも、なんであんなに怒ってるですョ?」
「その騙した奴が、ニャル子の兄貴を名乗ったからな」
「じゃあ、ニャル子ちゃんの聞いてきた『兄さん』って……」
「……まぁ、どちらにしろぶっ飛ばして牢屋にぶち込まれている事には違いは無いけどな」
主にニャル子の活躍で……という部分は省く真尋だった。

「兄さんのかたき!」
「……ニャル子、落ち着いて。英語で言うと『チルアウト!』」
一秒を感じとり、命を大切にし、女神を味方につける様なその言葉も今のニャル子には届かない。

「それで、そのときはどうやってニャル子ちゃんの記憶を戻したの?」
珠緒の問い掛けに真尋は嘆息する。そして、珠緒と彼女の抱えるぬいぐるみに頭を下げた。
「僕とニャル子だけの空間を作ってくれないか?」……と。


703 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:30:28.46 ID:Y3tbxCZw
「八坂さん!そこっ……!駄目!」
真尋が首筋に舌を這わせると、ニャル子は電撃を喰らった様に身体を震えさせた。
白い手袋をはめたその手から名状しがたいバールの様なものが落ちる。
ニャル子を抱きしめたまま真尋は、首筋から離した顔をニャル子の唇へ……。

「や!駄目……です」
ニャル子はその口づけを拒んだ。

無理矢理にでも……と思うもニャル子の瞳に、恐れと困惑を見た真尋はその口づけを胸元に落とした。
「ひあああ!」
腰が砕けるように膝を折るニャル子。真尋はその身体を支えると更に舌を胸の谷間に這わせた。

「なんで……八坂さんは敵……なのに」

ニャル子に拒絶される事に心臓がひしゃげる様な切なさが胸を満たす。
しかし、ニャル子の抵抗は激しさを失い、抱きしめただけで全身から力が失せている。
言葉とは裏腹に、ニャル子の全てが真尋を求めはじめていた。


以前真尋がニャル子の記憶を取り戻した方法……ニャル子が最も印象に残っている思い出をニャル子に刻むこと……。
真尋はニャル子と歩んできたこの数年を振り返る。
以前は真尋とのキスにより記憶を取り戻したニャル子。……またキスをすれば記憶は戻るだろうか?
何かキス以上の思い出はないか?

答えは……。


704 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:32:43.66 ID:Y3tbxCZw
ドレスの裾に忍ばせた指が手触りの良いストッキングを滑り、奥へ。
ガーターベルトをなぞり、熱く湿りはじめたショーツに……。


イス香は真尋とニャル子の居る空間を『ずらす』とだけ言った。
以前真尋が珠緒に告白を受けた、二人だけの空間を作った技術の応用だと言う。
……以前その件で叱責を受けたイス香にとっては厳罰ものの行為だ。グーで殴るのは勘弁しようと思う真尋だった。


二人きりの結婚式場。真尋は腕の中で震える花嫁に口づけた。
「……愛してる」
「ひあ!う……!」
探り当てたニャル子のそこは、熱く濡れていた。ほぐす必要などないほどに、触れた指はニャル子の中に吸い込まれる様に沈んでいく。
「ニャル子の此処……気持ちいいよ」
心地好い締め付けに、真尋は感嘆を漏らす。
「八坂さん!指っ!ひゅご……い!」
口をパクパクとさせて官能的に悶えるニャル子。ニャル子との営みの中で覚えた彼女の弱点を真尋は容赦なく突いていく。
曲げた人差し指の間接で膣壁を叩き、中指の腹で肉ヒダを擦る。
二人の吐息が荒く乱れる。真尋は自制心の限界を感じて、ニャル子から離れる。

「ふ、にゃあ……」
真尋の愛撫にされるがままの状態だったニャル子は、退いていく求愛に、殆ど無意識に手を伸ばした。
「八坂……さん?」
震える指先に、真尋の指が絡んだ。
「一つになろう……」

ニャル子が感じるポイントを的確に蹂躙する愛撫でオチかかっていた彼女は、目の前に晒されたそれに目を剥いた。


705 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:35:31.29 ID:Y3tbxCZw
「駄目ですよぅ……こんなの……入らな」
ニャル子は上手く言葉を紡げない。頭は靄がかった様にボーッとする。
貞操の危機を前に、恐怖に震える四肢。そして堪え難い、胸がチクチクする想い。


目を覚ました彼女はウエディングドレスを纏い、敵のただ中に居た。
兄と名乗ったニャル滝の姿は無く、聞けば無惨にやられたという。
感情に任せて飛び掛かったニャル子はクトゥグア星人に化けた敵に翻弄され、こうして地球人に組み敷かれている。

ニャルラトホテプ星人の宇宙最強を誇る邪神力が何故かこの青年には全く通用しない。
その瞳に見つめられるだけで、身体はのぼたように火照り、
触られた部位からは麻酔にかかったかのように力が消え失せた。
(薬?ニャルラトホテプ星人をお薬でてごめにする気でしょうか?……エッチなご本みたいに!)
負けては駄目だと抗おうとするニャル子だったが……八坂真尋には逆らえない。

否、
(私が、八坂さんを求めているん……です……か?)


ニャル子は口内に溢れかえる唾液を何度も何度も飲み込んだ。
真尋の手の中でビクビクと脈打つそれから視線が離せない。
愛撫を受けていた時の倍の量の愛液がショーツを濡らす。
荒々しい息遣いで、真尋はニャル子を抱きしめる。強張る唇を強引に重ねる。
ニャル子の瞳がギュッと綴じられた。

熱の塊がニャル子の中に捩込まれた。


706 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:38:12.23 ID:Y3tbxCZw
「うあっ!くぅ!」
強烈な締め付けに真尋は呻いた。強張る膣肉を亀頭が押し分けていく感覚はまるでニャル子の初めてを奪ったときの様だ。
「ああ!ふあああ!!」
痛みと快楽に、ニャル子は激しく乱れた。操を奪われる恐怖と悦びに。

熱くぬめり、逆立つ膣ヒダを掻き分けていく感覚は絶望的なほど気持ち良く。
全てを膣内に納めた時には、その衝動は最早止められるものではなかった。
「ニャル子!……出る!」
「ふ、ふえ?でるって……えっ……?!」
瞬間、身体の内側に熱いほとばしりを受けたニャル子は、体を震わせる。
「あっ!くう……!あ!ああ!ひあああ!!」
真尋はニャル子の身体を力いっぱい抱きしめ、精液を注ぎ込みつづこた。
「こ、これぇ……あ、赤ちゃん……出来ちゃいます……よぅ」
「嫌……か?」
「……そ、そんな目で見ないで……下さい」

真尋の視線から逃れるニャル子の頬をそっとなでる。
「僕を見てくれ……ニャル子」
真尋はそういうと意を決した 。
懐を探り、目当てのものを取り出す。
「これ……一度ニャル滝に奪われて……中身も、今は無いけどさ……今でも肌身離さず持ってるよ」
ニャル子から初めて貰った『お守り』……輝くトラペゾヘドロンだ。

もっとも、箱に納められていた黒い結晶体は惑星保護機構に預けられているが。
「婚約指輪って言って僕にくれたよな……あのときは知らなかったけど……その意味を知ったとき……嬉しかった」
そういうと、真尋は箱を開いた。
「今度は、僕から申し込むよ……」
中には、指輪が入っていた。飾り気の無い、ダイヤの指輪だ。
「結婚してくれ。ニャル子……」


707 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:42:07.94 ID:Y3tbxCZw
「う……へへ……う……」
「ニャル子?」
「も……もし、いやです……って言いましたら……どう、しま……す?」
ニャル子の様子が変わった。顔は熱を帯びた様に紅くなり、
目は潤み、息遣いが荒い。
その様を好機と見た真尋は畳みかける!
「何度でも何度でも、お前が『はい』と言うまで拝み倒してやるよ!」
「ま、……や、やさかさんが、……い、いっぱい愛してくれたら……お、お受けする、かもです……よ?」
顔を伏せ、何かに耐える様な仕種。真尋はその意味を理解すると、ゆっくりと腰を動かした。

最奥で、ねっとりとした粘液に浸かっていた剛直がニャル子のナカを擦り上げる。
「ひぐ!くっはああぁ!!」
ニャル子の身体が跳ねた。
真尋の形にフィットしていた膣壁は瞬く間に、うごめく柔肉の奔流に姿を変える。絡み付き、カリ首の裏側にまで入り込んでくる。
「くあああ!」
余りの刺激に真尋の両膝が笑いはじめる。
しかし、正常位の格好でニャル子の脚に縋り付くと、尚も腰を繰り出した。
「ふあ!ふあああ!凄い!しゅごいです、まひろしゃん!!」
真尋は腰の角度を調整すると、小刻みに膣内の弱点を連打した。
「ニャル子!どうだ?結婚!するか?!」
「ま、まだ!まだ終わりじゃねーですよ!真尋さん!」
ニャル子は悪戯っぽいく笑っていた。
真尋は、半ば呆れた顔でそれに応える。
「絶対に!『はい』って!言わせてやるからな!」


708 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:44:10.41 ID:Y3tbxCZw
「はぁ!はぁ!くぅ!お前……!記憶が戻ったんなら!そう言えよ!な!」
ニャル子にしがみつくように、後ろから腰を打ち付けながら真尋は言った。
「はぁ……ん!ああ、あん……ひぅ!だって……だってぇ……!」
膣内の締め付けは強く、ヒダの摩擦は麻薬的に心地好い。真尋は何度もそのぬかるみに射精した。
ニャル子もその度に絶頂に達し、二人とも、もう息も絶え絶えだ。

「うっく!う……!う!くうう!」
真尋は身体を震わせると、赤いバージンロードの上に大の字で倒れ込んだ。
「はぁう……す、素敵……ですぅ」
ニャル子もその胸に倒れ込む。

「ニャル子ぉ……けっこん……してくれぇ」
真尋はそのまま、目を綴じた。

甘い香りのする銀髪を撫でながら、意識が深いところに落ちていく。


709 名前: 挙式 後編 [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 01:58:39.03 ID:Y3tbxCZw
「はい」
右頬に柔らかな感触。
「はい」
オデコに温かい感触。
「はい」
左頬。
「はい。はい。はい!」
顔中にキスの雨を受ける。
「喜んで!」
キスの最後はウエディングドレス姿のニャル子が胸に飛び込んできた。

ひざまずいた体制の真尋はニャル子のタックルを倒れるギリギリで耐え抜くと、その軽い身体を抱きあげた。

拍手と花びら、ライスシャワーが二人に注ぐ。ギャラリーは沸きに沸き、囃し立てる。

結婚して三年目の結婚式。結婚式後のプロポーズ。
一生の思い出は、真尋の記憶に、来世にまで受け継がれるのではなないかと言う程、恥ずかしい気持ちを残したのだった……っと」
「お前は、またそんな……」
「まぁまぁ、思い出は恥ずかしいくらいが華ですよ♪」

真尋は写真立てを戻すと、筆を置いたニャル子の背中を抱きしめた。
夢のような非日常は過ぎて、二人の日常は温かい温度で過ぎて行く。

「どんなときも、愛していますよ……真尋さん」
「ん……僕も、ずっと、好きだから」


710 名前: 挙式 ~蛇足~ [sage] 投稿日: 2014/07/30(水) 02:02:31.95 ID:Y3tbxCZw
「……ニャル子!」
「真尋ー!」

「おや?」
「クー子。ハス太!」

「……惑星保護機構から一日だけ接触の許可が降りた」
「二人とも、おめでとう!」

「……ああ、久しぶりのニャル子の匂い……芳しい」
「ってくぉら!いきなりくっつくんじゃねーですよ!」
「ん……?久しぶり?」
「みー!」
「シャンタッ君さんも喜んでいますよ!」
「私が仕立てたニャル子のウエディングドレス。いかがでしたかしら?」
「あなた……地球人との接触はご法度じゃなかったかしら……それと、ハスターに近いわよ」

「あはははは……一気に騒がしくなりましたね」
「でも、良いのか?こんなにぞろぞろと……」
「……脱獄したニャルラトホテプ星人が人質を取ってこの街に篭城したらしい」
「なんでも両親の説得で事件は解決したらしいが」
「……そのときに張られた結界のお陰……今日だけは地球人と接触してもご都合的に問題無い」

「……そんなことよりニャル子、ブーケは?」
「あはは、なんかスゴイ軌道を描いて私のとこに……」
「あらあら、珠緒さんなら、良いお嫁さんになれるわよ♪」
「これも幸せ光線の賜物ですョ!」
「暮井さんに腹話術の特技があるなんて驚いたよ」


「なぁニャル子。さっきのクー子とハス太って……ひょっとして」
「さぁて、なんのことでしょう?」


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

以上です。

長々と散文駄文失礼いたしましたm(_ _)m

  • 最終更新:2014-08-16 22:11:12

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