インセプション

276 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2012/05/14(月) 19:34:02.37 ID:owfIL6bs [1/2]
「真尋さん真尋さん、インセプションってご覧になりました?」
「え、見てないけど…。それがどうかしたのか?」
「主人公の手際が素晴らしかったのですが…見てないのならいいんです」
 風呂上がり、髪をタオルで結んだニャル子が不意に問いかけてきた。
真尋も風呂からリビングに帰ってきた所で、水でも飲もうかと台所に足を向けた時、ニャル子から声をかけられた。
「一体今度は何を企んでるんだ?」
「企んでるなんて人聞きの悪い。何もしてませんってば。…あ、お水どうぞ」
「ああ、ありがと…」
 ニャル子から渡されたゴツいガラスのコップを傾けようとし、真尋は嫌な予感に突き動かされるようにその手を止めた。
「…何を入れた?」
「何も入れてませんってば! つくづく信用ありませんね私…」
「じゃあ、このコップは何だ」
 水はニャル子が目の前で入れた。細工があるとすればこの、肉厚のガラスに大きく『β』と彫られたコップしかない。
「カバラのコップですよ。略さずに言うとガルバルディβのグラス」
「ラはどっからきた…」
 このコップはZと戦うのだろうか。相変わらずわけがわからなかった。

277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2012/05/14(月) 19:35:16.78 ID:owfIL6bs [2/2]
「水は無害なんだよな…」
「ええ、それはもう」
 グラスを傾け、水を喉に流し込む。冷たい水が火照った体に染み込むのがわかる。
一度飲み始めたら止まらなかった。
空になったグラスをテーブルに置くと、向かいのソファーに座ったニャル子が笑みを浮かべていた。
「…どうした?」
「いえ、特には」
「ふぅん…?」
 妙だ。何かがおかしい。
「真尋さん、さっきの話に戻るんですが」
「さっきの話…? ああ、インセプションか?」
「ええ。主人公のテクニックの話なのですが、ターゲットに水を飲ませるんですね?」
「水を?」
「はい。その時、コップの上を掌で覆う持ち方で水を渡すのですが…」
「さっきと同じ渡し方だな」
「掌に、睡眠薬を仕込んであって…ってパターンのやつです」
「え…」
「真尋さん…。頭が重くはないですか?」
「な、おま…」
 視界が黒くなっていく。
「…おやすみなさい、真尋さん」
 最後に見えたのは、ニャル子の厭らしい笑みだった。

  • 最終更新:2014-08-16 09:46:39

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