ホワイト・ホワイト・ホワイト

やっぱりホワイトデーじゃないかな
真尋→ニャル子
真尋→ニャル子

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

コレジャナイ感はご容赦下さい。

397 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:39:35.51 ID:WQ6PrEiV
キッチンに漂う香ばしい香りの中で真尋はコーヒーを啜った。
その隣では同じ様にカフェオレを啜るハスターがオーブン内を見守っている。
二人とも粉の付いたエプロンを着け、やり遂げた男の顔だ。

みー。という鳴き声にシンクをみやるとシャンタク鳥のシャンタッ君が、
クッキー生地まみれの顔をボールから上げた。
数十分まえの性懲りもなく挑んだ『自前』の卵の混入を却下したときのしょげ返りは面影もなく、
生地の味に満足げ目を輝かせている。

片付けもせずシンクに散らばる延ばし棒やら絞り袋やら抜き型やらが、
この中性的な面立ちの二人が紛れもなく『男の料理』に挑んだ事を物語る。
…男の料理に片付けは含まれないのだ。

明日は折しもホワイトデー。
二人にかせられたミッションは、実に3倍の人数を誇る女性陣への『お返し』だ。


398 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:43:39.10 ID:WQ6PrEiV
(その形の良いやつは珠緒さんの袋に入れるですよョ)
「………」

真尋は無言で焼き上がったクッキーを袋に詰める。
想い想いの形の焼菓子は程よい狐色に色付いており、トレー一杯を賑やかに満たしていた。

(あっ!その焦げたやつは絶対入れちゃ駄目ですョ)
「………」

真尋は無言で絞り袋で絞って作った揺らめくようなリボン形のクッキーを赤い袋に詰める。
続いてデフォルメされた猫の形にくり抜かれたクッキーを、
これまた様々な武器や防具を纏う猫のプリントされた袋に入れる。

(お~っと!そ、そのスピーカー型のクッキーはあぁぁあ!)
「だぁあ!うるせぇ!!」
「…どうしたの?まひろくん…」
「みー?」
十分に抑えた声だったが、青筋を浮かべる真尋にハスターとシャンタッ君がその顔を心配気に伺う。
真尋はごまかし笑いを浮かべると水玉模様の袋にクッキーを詰めた。
続いて六角形を同心に重ねたクッキーを、黒い袋に詰めた。

(ごめんなさいですョ)
(大体、こういうのは公平にするものだろ…お返しなんだから)
(つい興奮してしまいましたですョ…お恥ずかしいですョ……でも)
「……?」

ハスターが慎重にとりあけたクッキーは丸い生地に八本の足の生えたクッキーだった。
はにかむ様な表情で焼け具合を確かめると、それを大切そうに緑色の袋に詰めた。
(気持ちは大切ですョ?)
「………」
真尋は無言で手に持ったお花の形に焼けた一枚をしばし見つめた。
使った型はひな祭り様のケーキ細工に使ったものだ。

「みー!」
ハスターが放った不揃いな形のクッキーを器用に口でキャッチしたシャンタッ君が、
歓喜の鳴き声を上げた。


399 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:44:31.19 ID:WQ6PrEiV
――――
「それで、私は一体何をすればいいのだ?」
毎日の幸せ電波送信業務中に呼び付けられたイス動は憮然と目の前の『上司』にそう問うた。
問われた上司…イス香はイス動に背中を向け、手を後ろ手に組んだ姿勢のまま芝居がかった仕種で窓外を眺めている。
「話しは簡単ですョ…それを使いなさいですョ」
逆光に浮かぶイス香の影はゆっくりと振り向くと、卓上のモノをない顎でしゃくった。
「………」
イス動は無言でそれを手に取る。
「ターゲットは八坂真尋サン…時間軸太古の地球時間。20XX年3月14日に合わせるですョ」
「……お前はいつまであの人間に干渉を続けるのだ?」
「シャラップですョ!これもアフターフォロー…全てはご迷惑をおかけしたあの人の為なのですョ!」
ふっふっふっ、と笑う上司にイス動は肩を竦めて嘆息してみせると、
そのカートリッジを掴みイス香の部屋を後にした。
『一番迷惑を被ったあの二人へのアフターケアはないのか?』とは聞かなかった。


400 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:45:29.43 ID:WQ6PrEiV
3月14日

気が付いたら八坂真尋はそこに居た……。

「ありがとう八坂君!」
目の前の少女はにかんだ笑顔を見せた。
「まぁ、口に合うかはわからないけどさ」
真尋はそういうと、一月前に珠緒から受け取った包みの事を思い出した。
あの焦げた匂いのするものよりは自信はあるけど…とは言わない。

「あ!…でも良かったのぉ?」
珠緒の可愛らしい笑顔が瞬転、もう一つの彼女の顔が首をもたげる。
ニヤリと吊り上がる口角は『良いんですか奥さん?』とでも良いたげだ。
「ばっばばっば…馬鹿!これはお返しであって、ニャル子にはもちろん…!?」
しまった!真尋がそう察するよりも、珠緒の筆が先んじた。

「本命は八坂ニャルラトホテプ…っと」カリカリカリカリカリ
まんまと珠緒の誘導尋問にひっかかった形で真尋は頭を垂れた。
にんまりと珠緒は笑顔を作ると、
「取材協力ありがとうごさいましたぁ~~!」
そそくさとその場を立ち去り……廊下の曲がり角でふりかえり水玉模様の包みを掲げてウィンクをしてみせる。
『これに免じて、言い触らすのは勘弁してあげる』
真尋は深々と合掌してみせた。

ふぅ…と嘆息すると真尋は首を捻る。
「夕方?」
3月の夕日が窓外に見えた。
時計は17時をさしている。
帰宅部である真尋にとって、この時間まで学校に居ることは珍しい。

記憶はあった。授業を受け、昼食を食べ…授業が終わり…ニャルラトホテプと…
いや、珠緒を呼び止めて、ニャルラトホテプへクッキーを…?

「八坂君!!」
真尋の追憶はそこで途絶えた。ついいましがた立ち去ったハズの
歩くスピーカーが血相を変え走るスピーカーとなって駆けてくる。


401 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:48:21.99 ID:WQ6PrEiV
校舎の窓から睥睨したベンチには二人の人影。
薄暗くなりだした夕日の中でも美しく輝く銀糸の様なロングヘアー。ニャルラトホテプだ。
見える角度からは相手は見れないが、残念な仕種でまくし立てるニャルラトホテプにリズム良く身体を揺らしている。
……笑っているように見えた。

ぞくり…と真尋の背筋に悪寒が走る。
「八坂君…あれって…」
気遣わしげな珠緒が遠くに聞こえる。
ひとしきり残念な痴態を演じたニャルラトホテプは手にした水色の袋から何かを取り出した。
それを差し出された相手は数秒逡巡し、頭をそちらに傾けた。

真尋は廊下を歩き出した。真尋を呼ぶ声と眼下に見た光景に背中を向けて。
「八坂君っ…待って!」
階段を降りる真尋に珠緒が追い縋る。
「さっきのあれ…」
「ん……?」
「いま、ニャル子ちゃんと一緒に居たのって…」
「まぁ、ヒトには色々あるから」
「色々あるって…!?」
前に歩み出て行く手を阻む珠緒は、息を呑んだ。

「何やってんだろ…僕」
真尋は珠緒を抱きしめながらそう呟いた。


402 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト [sage] 投稿日: 2014/03/09(日) 00:53:21.74 ID:WQ6PrEiV
「ごめんな…暮井」
「ん……良いんだよ八坂君」

真尋は腫れた頬をさすりながら、もう一度だけ、ゴメンと言った。

真尋は駆けた。

「はぁ~~もう…しっかりしてよね」
その姿が見えなくなった後。暮井珠緒は、ちょっとだけ後悔した。

「泣いていなかったら…ヤバかったかな…」

ヒリヒリと痛む右手をそっと胸に抱いた。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

410 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 2 [sage] 投稿日: 2014/03/11(火) 08:05:06.15 ID:bcHfjTxt
真尋は腕時計を確認した。
次いで、携帯電話を取り出すと念を込める様にメールの受信BOXを確認する。
メールの受信が1件増えていた。

From:暮井珠緒
件名:(nothing)
本文:
頑張って!ニャル子ちゃんが待っているのは八坂君だけだからね!

◆◆◆◆◆


面ばゆい気持ちになりながら、真尋は携帯電話を閉じた。
今日という日が何か特別な日に感じられる…。

最初に届いたメールはクトゥグアからだった。
『幻夢郷 新作ゲーム 徹夜で』

次いで、頼子。
『シャンタッ君を連れてクエストを回してきま~~す』

アト子。
『<本文は不適切な単語が含まれていたため、削除されました>』

ハスターはルーヒーが持ち帰り、今八坂家に居るのはニャルラトホテプと真尋だけということになる。

《ニャル子ちゃんが待っているのは八坂君だけ》

言い聞かせる様に、その言葉を反芻した
「ニャル子が待っているのは…僕だけ」


411 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 2 [sage] 投稿日: 2014/03/11(火) 08:07:20.28 ID:bcHfjTxt
―――――
真尋はニャルラトホテプの部屋の扉を開けた。

一瞬驚いた表情を見せたニャルラトホテプの顔は、
真尋の姿を見ると途端に嬉しそうなものに変わる。
「真尋さん!早かったですねっ!」
エプロン姿のニャルラトホテプは自室のキッチンで、
野菜を刻んでいるところであった。
ノックをせずに入った真尋を咎める様子はない。
……その無防備な姿が腹立たしかった。

「真尋さん、お肉は……」
そう言いかけたニャルラトホテプは、次の言葉を飲み込んだ。
「んっ…んむぅ…ちゅっ…」
捩込んだ舌がニャルラトホテプのそれを絡めとり、
甘い匂いと、とろりとしたモノを吸い上げた。

細く、小さな身体を抱きしめると、まるで筋肉なぞ存在しないかのように柔らかな触感を全身に感じた。
力を込めるとこのままペシャンコにしてしまえそうな危うさに、真尋はこれからしようとする行為を想い、恐怖した。

そして同時に、狂おしい程の興奮が…。

413 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 2 [sage] 投稿日: 2014/03/11(火) 08:09:35.45 ID:bcHfjTxt
エプロンの上から乱暴に触れた乳房に真尋の指が食い込む。
ニャルラトホテプの顔が苦痛に歪んだ。
エプロン、上着、ブラジャーを挟んでなお、心地好い弾力を掌で蹂躙していく。
「い…あァ!ん…くぅ!」
痛みにうめきながらも決して抗おうとしないニャルラトホテプに、真尋の罪悪感が悲鳴をあげる。
だが、首筋から這い登る衝動は強く、真尋はたわわな乳房に感じる熱を味わった。

震える手でズボンを押し上げる剛直を掴み出し、ニャルラトホテプのスカートを引き降ろす。
あらわになったショーツに真尋は堪らず、射精した。
「んあっ…ん…は……あっ…」
放心状態のニャルラトホテプに真尋は覆いかぶさった。
絶頂の余韻に震えるペニスを精液で汚れたショーツに押し付ける。
(だ、駄目だ…やめろ!)
理性を振り絞るも未だ身体は増幅された劣情の隷のままだ。
(やめろ…やめろ!)
ニャルラトホテプのショーツを破り取る。ニャルラトホテプの瞳が驚きで見開かれた。
(やめろ!やめろ!やめろ!!」

「だったらやめろ、バカタレ」

ガン!と、強い衝撃。真尋の目の前が真っ白に染まる。

意識が途切れる瞬間…
真尋はただ、ニャルラトホテプの目尻に浮かぶ涙を拭ってやりたいとだけ願った。


414 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 2 [sage] 投稿日: 2014/03/11(火) 08:13:36.42 ID:bcHfjTxt
―――――
真尋はリビングの扉を開けた。

一瞬驚いた表情を見せたニャルラトホテプの顔は、
真尋の姿を見ると途端に嬉しそうなものに変わる。
「真尋さん!早かったですねっ!」
私服姿のニャルラトホテプはリビングのソファーから身を乗り出した。

「あ…ああ、ただいま」
真尋は大輪の向日葵の様に笑うその顔を注視出来ない。
「……どうしました?」

痛い程に胸は高鳴り、喉がカラカラに渇いていく。
「なあ、ニャル子…」
「なんですか?」
何処か悪戯な笑顔を見せるニャルラトホテプ。
「今日、母さんは帰らない…って」
だからさ…と言い募る前に、真尋の身体は柔らかな感触に包まれた。
「!!?」
「…しっています」
甘い香りに全身の筋肉がゾクゾクと震えた。

「今夜は…私と真尋さんだけですよ…?」


415 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/11(火) 08:15:58.38 ID:bcHfjTxt
―――――
真尋は開けっぱなしのリビングの扉をくぐった。
迷いなく目の前の二人に近づくと、背中を見せる男の肩を掴む。
その緩んだ顔を有無を謂わせずに殴りつけた。

堪らず尻餅をついたその男の前で、呼吸を整えると、
「僕の…ニャル子に…手を出すな……!」何度も心で叫んだ台詞を口にした。
「ま、ままま…真尋さん?!」
あまりの事にパニックになるニャルラトホテプに真尋は向きあう。
「ニャル子!好きだ!!」何度も心で叫んだ台詞を口にした。
「こんな奴にお前は渡さない!」何度も心で叫んだ台詞を口にした。
「こんな……?」殴り倒した相手と目が合った。

「「は?」」
真尋と目が合う。
「「はああぁあ?!!」」

二人の真尋声が重なって響いた。



「「どうしてこうなった…」」
下手な双子よりもそっくりな二人が同時にそう呟いた。
「話せば長くなるのですが…」
「「三行で説明しろ」」
下手な双子よりもそっくりな二人が同時に言う。

「何処かの誰かが真尋さんを増やしちゃったみたいです」
「声明も無いので目的は不明ですが、今のところ敵意や害意は無いみたいです」
「……ひょっとしてこれはブツブツブツ」

《チャンス》とか《美味しい》とか言いながら涎を垂らしはじめた残念な奴を無視すると、
二人の真尋は互いを見つめた。
増やしちゃったの一言で済ますには、冗談がきつい。

「「どうしてこうなった…」」
下手な双子よりもそっくりな二人が同時にそう呟いた。

「……あ、因みにもう二人います」
四行だった。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

421 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:15:47.60 ID:ELqUmT3I
「真尋さん…えーと、真尋さんのご様子は…?」
ニャルラトホテプは彼女自身の部屋に入ると、そう尋ねた。
真尋は無言で、ソファーの上に寝るもう一人の自分を顎でさす。
着衣は整えられて、頭のコブには濡れたタオルがぞんざいに乗せられている。

「ごめんなさい真尋さん!やっぱり、話しちゃいました」
「ん…仕方ないよ」
ペロリと舌をだしてテヘっと笑うニャルラトホテプに、真尋は気にするなと手を振った。
「おや、怒らないのですね?」
「呆れてものも言えないだけだ」
三人目と普通に過ごせと指示はしたが、四人目までが闖入してきたことで
ニャルラトホテプを責めるのは酷だ。
……それに、ニャルラトホテプに襲い掛かったもう一人の自分を一晩中見張ると申し出たのは
他ならぬ真尋自身だったが、いろいろとやるせない気持ちがあったことは否定出来ない。
「じゃあ、ちょおっと待ってて下さいね~」
「ん…」
ニャルラトホテプは軽やかに部屋をあとにした。

「……そんな顔するなよ」
タヌキ寝入りを決めていたもう一人の自分が、薄目を開ける。
「針は抜いたぞ」
驚いた様子もなく、真尋は首筋から抜き取った細い糸を晒してみせた。

「あのクモ女…」
そう言いながら、二人の真尋は心の中で苦笑した。


422 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:17:45.65 ID:ELqUmT3I
「いやぁ!これはもう、両手に花とかいうレヴェルじゃありませんな~~!」
ニャルラトホテプは大袈裟に万歳してみせると、
彼女の左右で渋い顔をする二人に交互にスリスリと頬を寄せる。
対面の真尋は堪らず頭痛のポーズだ。

「これはあれでしょうか!私の不断の真尋さんへの愛が神様に届いたとしか…!!」
残念なハイテンションでがなり続ける。

頭をおさえる真尋の頭痛の種は、はしゃぐニャルラトホテプのせいだけではない。
恥ずかしさで死ねるなら…そう思いながらも真尋は話しをまとめた。

「…で、お前が母さんと、お前が暮井と…こいつがアト子で、僕がクー子と…か」
「それにしてもよくクー子を撒けましたね?私ならそんな面白い…
 もとい大変なことに首を突っ込まずにはいられませんよ?」
今の状況に最初に気付いたのはクトゥグアである。
新作ゲームを手に入れたあととは言え『増えたのがニャル子だったら良いのに』
の一言で済まされたのはいろいろと複雑だった。
……気を回したんじゃないか…と思わないわけではないが。

「ん…」
「どうしたんですか?真尋さん」
「なんでもねぇよ」
しまりの無いニャルラトホテプの顔を直視出来ない。
……それよりなにより。

(なんて顔をしてんだよ僕は…)
ニャルラトホテプの左右の同じ顔が、その横顔を覗いては逸らし、覗いては逸らし…。
無関心な顔を作っては……鼻の下を伸ばしている。

その二つの顔を覗いてはにへへとニャルラトホテプが破顔するのだ。


423 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:18:35.69 ID:ELqUmT3I
深呼吸をすると真尋は意を決した。
「こ、これだけは言っておくぞ!」
声が裏返りそうになる。
「ニャル子は渡さないからな…!」
呆気に取られる一同。次いで、
「真尋さぁ~~ん」
潤んだ瞳で縋り付くニャルラトホテプに対して、ギャラリーの反応は冷淡だった。
「何か悪いものでも食ったのか?」そんな声が聞こえる気がする。
知るものか!と、自身を鼓舞する。
珠緒に張られた頬の痛みに、応える様にもう一度言う。
「たとえ、僕にだって、ニャル子は渡さないからな…!」


(何言ってんだよコイツは!!)
自分の顔と自分の声でえもいわれぬ恥ずかしい言葉を吐くその姿に顔が熱くなる。
何か黙らせる方法は…と言う思いは別の方向からの声に呑まれた。


「ニャル子は、今夜は僕と二人だけだと言ったぞ…」
正確には『私と真尋さん』だが、意固地になる自分を真尋は抑えられなかった。
「知るかそんなの!」
立ち上がった真尋がぐいとニャルラトホテプを引っ張る。
「お前のものじゃないだろ…!」
食い下がる真尋。
「きゃー!わたしのためにあらそわないでーー!」
狂喜するニャルラトホテプ。
「恥ずかしい…死にたい」
真尋は頭を抱えた。
心の声に常に蓋をしてきた真尋にとって、鏡写しの存在が欲望を晒す。
俯瞰で見た自分自身の痴態はあまりにも幼稚で、一方的で…青臭かった。
「んもう、真尋さんったら~~……」
そんな真尋の気持ちも何処吹く風で浮かれ騒いでいたニャルラトホテプだったが、不意に語気が低くなった。
「「?!」」
二人の頭が見た目とは裏腹な強い膂力で左右の胸に抱かれる。
「取り合わなくたって…」
二人はジタバタともがくが、抵抗は無意味だった。
「私は、いつだって…」
真尋と目が合う。
「真尋さんのものですよ…?」
目が逸らせない。
左右の頭を優しく撫でている。
二人の抵抗はない。
ニャルラトホテプの表情は何処までも優しくて…。
「あなたも…、あなたも…、あなたも…、あなたも…私は…真尋さんが…」

「大好きです」


424 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:19:59.54 ID:ELqUmT3I
「んう…ん、ちゅ…れ、ん…っ」
「ニャル子…こっちも…ん、あむ…」
ニャルラトホテプはかわるがわる二つの唇と唇を合わせる。
二人の真尋はお互いに競い合うようにニャルラトホテプの舌を貪り、
相手よりも一滴でも多く唾液を呑ませようと自身の舌をくねらせる。
「ん…あぁ…」
粘る糸を引く舌を首筋に押し当てると、ニャルラトホテプの唇から甘い声が漏れる。
その声音はすぐにもう一人の唇に塞がれた。
首筋を這う舌は徐々に下に降りてゆき、身体のいたる所にキスを落としていく。

目の前で絡み合う三人目に真尋は呆れた様にため息を吐く。
よくあんなに恥ずかしい真似が出来るものだ…と、
(そもそも僕は、血迷った『こいつ』を引き受けるハズだったんだ)
目の前で誰が何をしていようと部屋の角で目を綴じて耳を塞いでいれば良いじゃないか…か?」
「?!」
耳元でそう言われた真尋は、驚いて横を見た。
「そう、ひがむなよ」
いつの間にかタヌキ寝入りをしていたそいつが、起き上がっていた。
「お前…また殴って欲しいのか?」
「僕は、まだまだシたいだけだよ」
「…な?!」
「お前もそうだろ?」

見ると、ニャルラトホテプを二人も嫉妬に近いじと目で見ていた。
「えへへ…今日はホワイトデーなんですから…ね?あ…ん」
乳首を噛まれたニャルラトホテプが甘い声をあげた。
「ホワイトデーは…あふ…ン!」
耳たぶを噛まれたニャルラトホテプが身体を震わせる。
「倍…がえし…くぅ…ん!」
桜色に上気したお腹を舌が愛撫する。
「ひっぐ!ああぁぁ!」
真尋はニャルラトホテプの太ももにキスをした。
「お前…これが望みか?」頭の中が白くなる。
「あ、当たり前じゃないですかぁ……」

「エッチな奴だ」別の自分の愛撫に震えるその姿に心がもやもやする。
「それは…真尋さんの前だけですよぅ…」

「ニャル子…もう…我慢が…」嫉妬と喜びで、自分を抑えられない。
「来て…下さい…」

「ニャル子…!」
「真尋さぁん…」


426 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:39:36.10 ID:ELqUmT3I
熱い膣内でまた射精した。
敏感になる肉針は肉の壁を隔てて響く別のぺニスの絶頂を感じた。
ギチギチに絡みつく肉ヒダの締め付けが強まる。
膣の収縮による圧迫ではない…ペニスがまた膨張したのだ。
「あぐ…!はぁ…っ」
身体を強張らせるニャルラトホテプの口腔から涎と精液とかこぼれる。
真尋はその唇にキスをすると、名残惜しく纏わり付く膣肉を引きはがす様に剛直を抜き取る。
肉欲のおさまらないソレにニャルラトホテプの指が絡み付く。
「お疲れ様ですっ…ん!くぅ…っ!」
別の真尋がその身体に被さった。
「んン…っ!さっきより…また、おっき…ンむ」
「お前ら、もうちょっと…加減を…くぅ!でる…!」
「やぁ……やめらいれ…愛ひて、くらひゃ…あ、っあぁぁぁん!!」
その顔と言わず、身体と言わずに粘液が散った。
その様に真尋はまた…。


427 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:45:57.80 ID:ELqUmT3I
真尋は腕時計を確認した。
次いで、携帯電話を取り出すと念を込める様にメールの受信BOXを確認する。
メールの受信が1件増えていた。

From:暮井珠緒
件名:(nothing)
本文:
頑張って!ニャル子ちゃんが待っているのは八坂君だけだからね!

◆◆◆◆◆


面ばゆい気持ちになりながら、真尋は携帯電話を閉じた。
申し図った様な事態に今日という日が何か特別な日に感じられる…。
校庭でニャルラトホテプとひとときの憩いを過ごした真尋は、
夕飯を一緒に作る約束をすると真尋は買い出し、ニャルラトホテプは仕込みの為に一度別れた。
……何を勘違いしているのか薬局の自動販売機の場所の書いたメモを握らせて…。

最初に届いたメールはクトゥグアからだった。
『幻夢郷 新作ゲーム 徹夜で』

次いで、頼子。
『シャンタッ君を連れてクエストを回してきま~~す』

アト子。
『<本文は不適切な単語が含まれていたため、削除されました>』

ハスターはルーヒーが持ち帰り、今八坂家に居るのはニャルラトホテプと真尋だけということになる。


真尋はニャルラトホテプの部屋の扉を開けた。


428 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:51:16.13 ID:ELqUmT3I
真尋はニャルラトホテプの部屋の扉を開けた。

一瞬驚いた表情を見せたニャルラトホテプの顔は、
真尋の姿を見ると途端に嬉しそうなものに変わる。
「真尋さん!遅いですよぉ…!」
エプロン姿のニャルラトホテプは自室のキッチンで、
土鍋を火にかけているところであった。
ノックをせずに入った真尋を咎める様子はない。
「例のあれは、どうしました?」
「っ!ば、飯の前になにを…!」
「いえいえ、ですからそのご飯の食材のお話しですよーー?」
「くっ……!」
これはしたりとニヤニヤ笑うニャルラトホテプに、真尋は憮然と買ってきた鶏肉を差し出した。

――――
「よくやったですョ!イス動!」
「………は?」
怒られるものと思って入室したイス動は上司の予想外の喜び様に呆気に取られた。
「邪魔が入らないように珠緒サン用の真尋サンを増やすように指示しましたが、このアレンジはナイスですョ!」
興奮気味にまくし立てるイス香の背後には珠緒に抱き着く真尋の姿。
イス動が密かに、増やした真尋同士がニアミスする確率を引き上げた結果の珍事だ。
「いやぁ、これはまた良い映像素材が出来たですョ」
大喜びで動画の加工を開始しはじめたイス香にイス動はない肩を竦めた。
この直後張り倒される真尋にイス動は同情を禁じえない。
イス動はイースサーチャーのカートリッジを抜く。
あとは次元修復作用で、八坂真尋が『増えていた間の時間』がご都合主義的に修復されることだろう。

そしてイス動は毎日の幸せ電波送信業務に戻るのだった。


429 名前: ホワイト・ホワイト・ホワイト 3 [sage] 投稿日: 2014/03/13(木) 12:52:21.63 ID:ELqUmT3I
食事を終えて、ニャルラトホテプオススメの映画を流しながら二人でくつろいでいる。
「んふふ…んへへへへ…」
「何だよ気持ち悪いな」
終始くつくつと顔をほころばせるニャルラトホテプ。
手には真尋が渡したクッキーの包み。
その中の一枚を見つめては顔を綻ばせる。
桃の花の形にくり抜かれた一枚だ。

「大丈夫ですよ~真尋さん」
「はぁ?」
「血迷って襲い掛かってきたって私は受けいれますよ~」
「そんなことはしない!」
「真尋さんがぁ、私がいなくて寂し~~ってときは、必ず慰めにいきます」
「そんな状況はありえない!」
「真尋さんが、男らしく告白してくれたなら……」
「それは…ん…」
「私は、どんな真尋さんだって受け入れます」
「………!」
「そうしないと、嫉妬しちゃいますものね~~」
「だぁ!うるさいうるさいうるさい!」
精一杯怒る真尋だったが、効果の程はただニヤついた笑顔を深めるだけだった。

「…腐る前には食べろよな」
「はいっ!」


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

【もも・桃】
花言葉
「天下無敵」「チャーミング」「私はあなたのとりこ」

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

以上です
お目汚し失礼しました。

  • 最終更新:2015-06-16 17:52:56

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