真尋はニャルラトホテプを愛していた。【長編】

12巻のネタバレふんだんに含んだのを書きたいのだけど
ええですか?
kiss


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451 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 05:32:03.26 ID:z2Q55XvU
「なんで日本語なんだよ」
壁に殴り書きされていたと言う文字を見た真尋の感想はそれだった。

《この世に兄より優れた妹などいないのだ!!》

ニャルラトホテプの携帯電話が鳴ったのはニャル滝事件から数日後の事であった。
写メで送られて来たそのルージュの伝言に嫌な予感しかしない。
「あの時の女装グッズ、独房に持ち込んだみたいですね」
げぇとえずく仕種をしてみせるニャルラトホテプだが、真尋にはその『あの時』に思い当たりがない。
「う…脳が…」
何かが深い記憶の底から這い登りくる感覚に頭がズキリと痛む。
「だ、大丈夫ですか?!真尋さんっ!」
よろめいた真尋を心配気に支えるニャルラトホテプに、真尋はしばし頭痛を忘れた。
柔らかな手と、甘い匂いとに安らぎを覚える。しかし
「おいニャル子、その手に持っているバットはなんだ?」
愛する少女の片手にぶら下がる黒光りする凶器に、甘やかな思いが頭痛と一緒に屋根まで飛んで、壊れて消えた。
「いえ、そのぅ…封印が解けそうな兆しが見えたもので」
気遣わし気な表情そのままに、凶器を構え、にじり寄る混沌に真尋は一歩後退り、二歩後退り。
「大丈夫…痛くしませんよ?」
何処までも慈愛の篭った瞳でその切っ先が持ち上がる。
たゆんと揺れる豊かな胸に、場違いな興奮が胸に広がった。
そのとき、
「……ニャル子……少年から離れて」
真尋は背後からの声に振り向いた。
緋色のツインテールの少女…クトゥグアが立っていた。


452 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 05:34:53.11 ID:z2Q55XvU
「……ニャル子」
クトゥグアは真尋の前に割り入ると、バットを構えるニャルラトホテプと対峙した。

「おどきなさいクー子…真尋さんが苦しんでいるのです」
元はと言えばニャルラトホテプの一言が原因であるのだが…。
「……ニャル子、少年は危険」
言うが早いか、クトゥグアは神速で身を沈めるとニャルラトホテプにタックルを慣行した。
「なっ!?」
両手を振り上げた状態のニャルラトホテプの反応が遅れた。

「……むふぅむふぅ…今日も芳しい」
ニャルラトホテプのスカートに顔を突っ込んだクトゥグアが深呼吸を繰り返す。
どうみても真尋よりもこいつの方が危険度は高い様に見える。
「……空気が美味しい」
「くぉらクー子!何やってんですか!」
ゲシゲシと膝を入れるニャルラトホテプだが、生半可な痛みは縋り付く変態を悦ばせるばかりだった。
「スゥーッ!ハァーッ!イィヤァァー!!」
「……グワーッ!」
気合い一閃。砕けた前歯が宙を舞った。

「ふぅ、手こずらせてくれましたね…」
ビクビクと痙攣するクトゥグアを踏み越えてニャルラトホテプは真尋に向き直る。
「ささ真尋さん、続きを」
返り血を頬に浴びたニャルラトホテプが笑顔を向けた。
取り落としたバットの変わりに、胸の谷間から怪しげなペンライトを取り出す。
「さあ、痛くないですよ~」

「あ…」
「へっ?…ッドギア!?」
ニャルラトホテプが前のめりに倒れるのを真尋はどうにか受け止める。
バットを振り下ろした姿勢でザンシンするクトゥグアがいた。


453 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 05:41:41.45 ID:z2Q55XvU
「大丈夫か?」
「……ニャル子からの痛みはいつだって心の栄養だから」
そういうと、真尋の腕の中で気を失ったニャルラトホテプの無防備に晒されたスカートのお尻を視姦する。
クトゥグアは見る間に、その鼻孔から垂れつづける鼻血の量を倍増させた。

「……少年。ニャル子の独り占めは許されない」
はぁ、と溜息をついた真尋にクトゥグアが言う。
「……少年。私の日課はニャル子のパンツの匂いで始まる」
「いきなり高度な変態トークをはじめるな」
いつもの学校の制服からチラリチラリと見えた白いトライアングルを思い出しそうになる頭を振るった…頭痛は消えていた。
「……少年。私は真面目」
クトゥグアの抑揚の薄い声音に何やら真剣味を感じて、
真尋は肩をすくめると口を閉じた。

「……ニャル子のパンツの匂いを私は毎日嗅いできた」
何処から切ってどの断面を覗いてもまごうことなき変態だった。
「ん?毎日?」
「……そう、あの日だって」
あの日…真尋に思い当たるその日…。
クトゥグアはそれ以上語らなかった。

「いたたたた…」
折よく頭をさすりながらニャルラトホテプが目を覚ます。
真尋は何かをごまかす様にそちらに気を向けた。
大丈夫か?と言う間もなくクトゥグアは真尋の腕の中から、ニャルラトホテプを助け起こした。

「……大丈夫?ニャル子、何処も怪我してない?」
殴りつけたのは誰だよ…とは言えなかった。
バツの悪い気持ちを抑える…と、
「ありがとうございます。クー子さん」
「……クー子さん?」
「どうかしましたか?八坂さんも…」
「八坂さん?」
ニャルラトホテプは状況が飲み込めないとばかりに小首を傾げた。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


466 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 23:51:00.08 ID:z2Q55XvU
ピンポーン

「はぁーい!どちらさまでしょうか?」

扉の前には大きな髪飾りでポニーテールを結わえた少女が立っていた。

「やっほーニャル子ちゃん!来ちゃった!」
親友の顔をみた暮井珠緒は人懐っこい笑顔を見せる。
対したニャルラトホテプもつられて笑顔になるが、
その頭の頂点ではアホ毛がはてな?印を形作る。

「いやぁ、ちょうど近くに寄ったものだからさ~ニャル子ちゃんに頼まれていた件をね…」
状況を飲み込めていない様子のニャルラトホテプをさておき、
珠緒は肩に下げたスポーツバッグから何やら付箋を大量に貼られた雑誌を取り出した。

「こんなんどうかな?」
ペラペラと頁をめくると、お目当ての頁を見つけその見開きをニャルラトホテプの方に向けた。
珠緒の様子をしげしげと眺めていたニャルラトホテプは突き出された雑誌を受け取る。

「……!!」
その顔が見る間に朱に染まっていった。
屹立したアホ毛がブンブンと左右に揺れる。

「暮井…」
喧騒を聞き付けた真尋が、ひょこりと台所から顔をだした。
やっほー!と珠緒は手を振る、ニャルラトホテプは真尋に気付くとその雑誌を素早く背後に隠した。

「じゃあね!うまくやるんだよ…」
珠緒はニャルラトホテプに耳打ちすると、バチコーン!とその胸先に引き金を引く仕種。
目を白黒させるニャルラトホテプはただ意味も分からず頷いた。
そして、真尋に向き直ると『憎いねこの色男』とジェスチャーしてみせる。

「ほんじゃね~!」
一方的な挨拶と共に、来たとき同様の人懐っこい笑顔を見せると、
歩くスピーカーは八坂家を後にした。


467 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 23:52:04.92 ID:z2Q55XvU
「暮井珠緒さん、とおっしゃられるんですね」
「……珠緒は良い子…いつも私とニャル子のことを応援してくれる」

クトゥグアはニャルラトホテプの膝枕の上で耳掃除をされながらそう言うと、ヒクヒクと鼻を動かし、ヘブンに至る。
そんな傍目には仲の良い姉妹の様な二人の姿に真尋は苦面を作った。

「また、きおく喪失になっちゃったの?!」
「み~~…」
気遣わし気な小動物コンビに、真尋はあらましを説明した。
犯人は伏せて…。

「……それでニャル子ちゃんは、
 ニャル滝につれていかれる前のじょうたいに戻っちゃったのかぁ」
凶器となったXのアーティファクトをどういった経緯でニャルラトホテプが所持していたのかはわからぬが、
これでど突かれていたのが真尋の頭だったらと思うとゾッとしない話しだ。
……それはそれとして。

「……痛い」
「あわわわわ!く、クー子さん!大丈夫ですか?!」
ニャルラトホテプのお尻に伸ばした手に深々と突き立ったフォーク。

「……私はただ、膝枕をもっと柔らかくしようとしただ…ひっ!」
なおも言い募ろうとするクトゥグアにもう一本フォークを構えて見せる。
それで鎮火したかに見えた炎の神性はしかし、
変態を鎮めて食卓に着くまでにもう二本の消化活動を要することとなった。

「……ニャル子のペロペロした傷口、もう一生洗わない」
「はい、シャンタッ君さん、あ~~ん」
「み~~ん…」
「ニャル子ちゃん。このお味噌汁おいしーよ!頭なでなでしてあげるね!」
「ありがとうございます!ハスター兄さん」

食卓の席。
あいも変わらず、ここぞとばかりにきれいなニャルラトホテプを満喫する居候達に、
真尋はモヤモヤを募らせる。

頼子は外泊の為、居ない。
八坂家のまとめ役として真尋が今すべき事は…と思いを巡らせる。
ニャルラトホテプの記憶を戻す方法なら、とっくに心得ている。

……問題はいつ、どのタイミングでそれをするかというだけだ。


468 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 23:52:58.04 ID:z2Q55XvU
ピンポーン

「はい。どちらさまですか」

扉の前には黄金の糸を束ねた様な美しい髪、純白のローブを纏った青年が立っていた。

「八坂真尋。妹を出してもらおうか」
真尋の顔を見た野良ニャルラトホテプは蔑む様な顔をすると、居丈高にそう言い放った。
真尋は凍りつく……

忘れてた。完全に。

パタンと扉を閉じると真尋は思案した。そのとき

「今の声……ニャル夫兄さん…?」
ニャルラトホテプが立っていた。

今のニャルラトホテプを奴に遭わせて良いわけがない。
そう思う真尋であったが、当のニャルラトホテプは心此処にあらずといった体だ。
今にも玄関を飛び出そうとする姿に、真尋はニャルラトホテプを奪われたあの夜を思い出す。

「待てニャル子!」
必死の思いで止めようとするも、ニャルラトホテプは真尋を見ていない。
その目は記憶喪失の彼女が無意識に思い出した真の肉親しか求めていない。

「会いたかったぞニャル子」
いつの間にそこに居たのか、野良ニャルラトホテプ…ニャル夫が真尋の横に立っていた。

「ニャル夫兄さん…」


469 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 23:54:36.26 ID:z2Q55XvU
「記憶喪失…だと」

居間で向かい合うニャル夫とニャルラトホテプ。
ハスターとクトゥグアはニャルラトホテプを守る様に立っている。
真尋は緊張した面持ちで茶と菓子をニャル夫の前に置いた。
シャンタッ君は先程から食卓の下で、泡を吹いて死んだ振りを決め込んでいる。

「はッ…くだらん冗談はよせ」
ニャル夫は優雅な仕種で湯呑みを持つと、一口。
「私を愚弄する気か…」
端正な顔が歪む。二口。
「ニャル子…臆したか」
バリバリと湯呑み茶碗を咀嚼した。
緊張が場を支配する。

「……ニャル夫兄さん」
ニャルラトホテプが重い口を開いた。

「もう、やめましょうこんなこと…」
全員の視線が集まるなか、ニャルラトホテプが言の葉を紡いだ。
その声は震えている。
恐怖からではない…深い慈しみを湛えたその瞳から一筋の涙がこぼれた。

「命乞いか…千の偽り、万の嘘が…私に泣き落としなどきかぬぞ」
ハスターとクトゥグアが緊張を強めた。

「わかりました」
一触即発の空気のなか、ニャルラトホテプが二柱の幼馴染みの前に歩み出る。
待て!そう言って駆け出そうとする真尋をニャルラトホテプの視線が射抜いた。

「私を好きにして下さい…」
その声は相変わらず震えていた。しかし、決断的な意志を持ったそのコトダマに真尋は動くことが出来ない。

「……好きに、か」
「はい」
ニャル夫はふんと鼻を鳴らす。

「そうだな、では先ずは、土下座をしてみせろ」
ニャルラトホテプは膝を着くと、深々額を床に付けた。
その後頭部に足が乗せられる。
部屋の温度が急激に上がる。クトゥグアの輪郭が陽炎に揺らいだ。

「繰り返せ。兄よりも優れた妹などいない」
「…兄さんよりも優れた妹なんていません」

「お前は虫けらと同じだ」
「私は…虫けらです」

「……ニャル子」
クトゥグアが泣いていた。
ハスターが悔しさに顔を歪めた…真尋も…。


470 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/19(水) 23:56:51.21 ID:z2Q55XvU
それから30分…

「兄さん…そんな事ないですよ!兄さんは出来る邪神(ひと)じゃないですか!…覚えていませんけど」
「慰めはよしてくれ……兄ちゃんはな…兄ちゃんはな…」
妙な事になっていた。
クトゥグアとハスターは今の居間のテレビで、落ちもの対戦パズルゲームに興じている。
gdgdだった。

「ニャル夫兄さんならきっとやり直せます!」
その両手を掴み、ぐっ…と力の篭った瞳でニャル夫を見据える。
その瞳は何処までも澄んだ輝きを放つ。

「うっ…うぅ…そんな目で、俺を見ないで…」
「兄さん。兄さんには私がついています!」
むせび泣くニャル夫…恐るべきはきれいなニャルラトホテプの純白の心。

しばらくしゃくりあげていたニャル夫は、ふと自嘲的な笑みを見せた。

「兄ちゃんは駄目な邪神なんだ…今からそれを証明してやる!」
ヤバレカバレな挙動でニャルラトホテプを突き放すと、ニャル夫は人差し指をその鼻先に突き付けた。
「ワンピースをたくし上げて、裾を口にくわえろ…!」
ピクン。とクトゥグアが反応した。

「どど、どうだ…!この兄を心底軽蔑しただろう!」
ドン引きです。
壊れてやがる…どうしてこんなになるまで放って置いたのか…。と、

「こう…れふか…ほにぃひゃん」
清楚な純白のショーツが、羞恥に震える太ももの間に見える。
「ほにーひゃんのためにゃら…わらひ…どんにゃことらって…」
頬を伝う涙は果して、羞恥心の為だけだろうか。
潤んだ碧眼に見据えられたニャル夫はしばし、絶句した。

「お…」

「おお…お…!」

「俺の妹が!こんなに可愛いわけねぇだろおおおおぉぉ!」
そして、絶叫した。


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477 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 08:55:55.79 ID:EmQ8ZvGs
「世話をかけたな」

全くだ…。
ニャルラトホテプを押し倒したニャル夫をクトゥグアと二人してフクロにした事を思い浮かべ、
真尋はこぼれそうになる言の葉を胸にしまった。
……一応これでも彼は未来の真尋の義兄なのだから。

「ニャル夫兄さん…本当に行ってしまうのですか」
辟易とするギャラリーなどどこ吹く風で、名残惜しさを滲ませるニャルラトホテプ。

「妹よ…暫しの別れだ」
そういうと、涼やかな笑顔を見せたニャル夫は、その額に口づけた。

世界の色が変わった。
一般人の目では伺い知る事の叶わない結界に『迎え』が降り来る。

「ニャル子ちゃん…なかにはいろ?」
気を利かせたハスターが兄の手に
枷がはめられる場からニャルラトホテプを遠ざけた。

「……兄さん…ご壮健で…っ」
閉じられた扉の奥から啜り泣きが聞こえた。

「……妹よ…さらばだばだーッ!?」
クトゥグアのフルスイングを受けたニャル夫が仰向けに倒れた。
「……これは慈悲……ニャル子のあんな姿……一眠りの夢と忘れて」
「脈は…大丈夫。反応は…っと……有るな」
額に突き立てたフォークに感じる力強い拍動を確かめると、
二人はニャル夫がストレッチャーで囚艦されに運ばれて行く様を見送った。

「兄さん……か」
一人っ子の家庭で育った真尋にとって、兄弟とはある種の憧れであった。

今の妹分と弟分…同じクラスで学ぶ社会邪神だが…に恵まれた環境において、
兄と呼べる存在は、理想を打ち砕いて余りあった。
『真尋ーっ!』
あの時そう真尋を呼んだハスターとは大違いだ。
黄衣の王となったハスターに一度、ハスターは弟みたいだ
と言って、微妙な顔をされた事があった。
それはつまり、そういう事なんだろう。

『セラエノから返事が来た!消し飛んだ記憶を戻す方法だ!』
握った拳にぐっ…と力が篭る。

ふと、肌寒さを感じた真尋は先程まで近くにあった熱源が消えている事に気付く。
ぞわり…と、寒気とは違う思いが背筋を駆けた。

「クー子の奴!」
あの変態の思考くらい真尋にも読める。
真尋は自分の家に駆け込んだ。


478 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 08:58:34.87 ID:EmQ8ZvGs
「ニャル子ちゃんなら、クー子ちゃんが慰めるって…」

ハスターの話しを最後まで聞かずに真尋は階段を駆け登った。
目指すは、かつて物置だった一部屋。

『……ニャル子、力を抜いて……大丈夫……すぐに気持ち良くなる』
『これぇ…恥ずかしいれす…』
『……私が私だけのテクニックで慰めてあげる……くぅん…っ』
『やぁ…そこ…あつっ!ひゃあ!…んっ!』

「くぉらクー子!ニャル子に何やってる!」
ノブをガチャガチャと回すも、内側からロックされた扉はびくともしない。

『や、八坂さん?!』
『……少年…また私の邪魔をする気…?』
「ここを開けろっ!この変態がぁ!!」
『……いくら少年でもそのお願いは聞けない』
この変態は、おおよそ考えうる最悪の分類のツーランク上の変態だ。
一分一秒を争う事態に真尋はしばし思案する。そして、

「いいのか?ここを開けないと大変な事になるぞ」
『……ふっ…』
鼻で笑うクトゥグア。
『……邪神(ひと)は失敗を糧に進化するもの…また私のニャル子グッズを質に取ろうとしたって無駄』
「………」
『……全ては此処にある…グッズも…ニャル子も…すんすん…芳しい』
『にゃあ…っ!?そんな処の匂いかいじゃ駄目ですよぉ!!』
「…………今日の味噌汁美味かったな」
『!?』
「お前確か夜食にするって、残った味噌汁キープしてたよな」
『……邪神(ひと)は味噌汁のみに生くるに非ず』
「残ったごはんでニャル子におにぎりも作らせてたよな」
『……何を……する、気?』
「シャンタッ君に全部食べさせるわ」
『……待って少年…!……それは鬼畜の所業…!』
「わかったらここを開けろ」
『……うぅ、ニャル子がニギニギした梅オカカ……ごはん粒を舐めた手で巻いた黒海苔……』
扉の奥で重々しい解錠音が響く。


479 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 09:01:38.55 ID:EmQ8ZvGs
「ったく、油断も隙も無い…」

泣きながら扉を開けたクトゥグアを押し退け、部屋に入る。
ベッドの上にはニャルラトホテプが俯せに寝かされている。
はだけた両肩には、独特な匂いをあげる謎の物体がもされている。

「ん…お灸?」
「…………私はニャル子をリラックスさせるために宇宙アロマテラピーに則った合法的かつ安全な治療をしていただけ」
真尋はふーんとだけ言うと、部屋の中を見回した。

「…………少年…女の子の部屋を、そんなにジロジロみるのは失礼…」
言いながら、何かを気にする素振りを見せるクトゥグア。
その視線はチラチラと本棚の上に向けられる。

「………」
真尋はずかずかと本棚の前に立つと、その上に置かれた一抱え程もある、
ニャルラトホテプを模したぬいぐるみを手に取った。
大きさを加味しても、布と綿の塊としては妙に重い。
クトゥグアは観念した面持ちでさめざめと泣いていた。

背中のジッパーを開けると中からは、案の定ビデオカメラと増設のHDD、バッテリーが次々と出て来た。
ビデオカメラを操作すると、録画は止まり液晶画面に先程まで記録されていた映像が映し出される。
成る程どうして、いいアングルでベッドが映されている。

『……さぁベッドに横になって…ニャル子…ブラとショーツを脱いで…大丈夫私は見ていないから…でももっと脚を上げながらがいい…』
ピッ。ポチポチポチ。消却しますか?→はい。

「……これはほんの出来心……今は反省している」
「思いっ切り計画的犯行じゃねぇか!」
こいつはそろそろ本格的に逮捕されるべきではないだろうか?

「はふぅ…これぇ…なんか身体がポカポカします~」
ニャルラトホテプが蕩けたような声をあげる。


480 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 09:04:24.31 ID:EmQ8ZvGs
「おいお前、ニャル子に何をした?!」
普通のもぐさとは思えない甘い匂いを放つソレを取り上げる。

《ラトホテプ星人コロリニャルラトホテプ星人コロリニャル》
裏面には何故か日本語で書かれたその文字がぐるりと『淫』の一字を囲んでいる。

ジュッ。クトゥグアに投げ付けた二つの名状しがたい物はクトゥグアの額に直撃する前に灰となって大気に消えた。

「……ああ、ニャル子が……」
純白の布で涙を拭うクトゥグア。
真尋は弛緩したニャルラトホテプを背負ったまま、その布を奪い取る。
「……少年のエッチ……ニャル子のブラをどうするつもり?」
「ニャル子に返すんだよ…いいからそっちも渡せ」
口に含もうとするお揃いのショーツをもぎると、それをニャルラトホテプに握らせて真尋は変態の巣を後にした。

「まったく…見境なしかよ」
「……それは違う…私は全てのニャル子を、分け隔てなく愛しているだけ」

「おじゃましました~~」
脳天気に手を振るニャルラトホテプ。
真尋に背負われたまま身体を捻るもので、支える手が頭を抱える様に回された。
後頭部に柔らかな感触。
真尋好みの白いショーツが真尋の視界を覆った。


481 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 09:07:34.39 ID:EmQ8ZvGs
「ごめんなさい。八坂さん」

真尋の部屋のベッドに座らせると、まだ赤みのさしたその顔を覗く。
ニャルラトホテプは気まずそうに目を伏せた。
もじもじとしている姿が普段のあざとい仕種とはまた違った赴きがあり、
有り体に言えば…イイ。

「あのな、お前が必要にされたいって気持ちはよーーっくわかった。でもな…もっと自分を大切にしろよな」
強い口調に畏縮するニャルラトホテプ。
真尋はバリバリと頭を掻いた。

「……八坂さんは、何かして欲しいことはないのですか?」
美しい碧の光彩がキラキラと輝く。
「…っ!そ、それだよ!そうやって自分を安売りする!だからクー子達に良い様に利用されるんだ!」
とたん、キョトンとした表情。

「だって…それが私の望みですもの…ひゃあ!」
ニャルラトホテプを押し倒した真尋は、震えていた。
「なら、こんな事をされても…いいのか?」
真尋は荒々しくその胸を揉んだ。

「ふああ…はぁっ!ん……っ!」
「本当に良いのかよ!これで!!」
ブラをしていない双丘の暖かく柔らかな感触と、ツンと張りだした頂の存在感を
掌いっぱいに感じ、真尋の脳内が真っ白に染まる。

コクリ。ニャルラトホテプが頷く。

真尋はその横に身を投げだした。
「あーーもう……あーーくそ」
バリバリと頭を掻きむしる。
調子が狂うなんてものじゃない。
今のニャルラトホテプは要するに、クトゥグアでもハスターでも……真尋でも受け入れるのだ。

それが悔しかった。悔しがる自分が情けなかった。情けない自分を慰める存在が欲しかった。

それを今のニャルラトホテプに求める自分が情けなかった。
情けない自分を、ニャルラトホテプに慰めて欲しい……。

「八坂さん……」
「ん……」
「八坂さんがして欲しいこと、ありませんか?」

「……口で…してほしい」
ズボンを押し上げるソレを真尋は取り出した。

ニャルラトホテプはしばし逡巡すると、
「わかりました!」
一輪の花の様に笑うのだ。
(最低だ。僕)


482 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 09:11:03.57 ID:EmQ8ZvGs
「んん……はぁっ……れちょっ、んくっ…んく」
あまりの快感に腰が跳ね上がる。
喉奥に触れた亀頭が粘膜の熱さにビクビクと震えた。

「うぶっ!ん…!んん…れちょ……んっ…ちゅる」
苦しさに顔を歪めながらも、ニャルラトホテプは
舌で幹とカリ首を刺激することを止めない。

「きもひ……ひぃれふ…か?」
上目遣いでもひもひと尋ねるニャルラトホテプ。
……これも真尋の要望だ。

「くぅ…!あっ!」
呻きながら真尋はその頭を掴む。
信じられないくらいに努張したペニスを舌先でねぶられる度に、
意識が焼き切れそうになる。

「くぅ…!ニャル子……そろそろ」
「んむっん…ちゅ…んく…ん………はい」
熱病にかかったかのように赤面するニャルラトホテプは、
純白の布を目の前で脈打つ肉棒に被せた。
うっすらと染みの浮いたそれが、ペニスの輪郭に突っ張った。

「す…ごいです…どんどんおつゆが滲んで……ぺろぺろして、良いです…か?」
余りにも退廃的なその光景に、真尋は喉を鳴らした。

暮井珠緒が置いていったと言う雑誌そのままに奉仕するニャルラトホテプの姿に、
ペニスは刻一刻とその太さを増していく。
「あ……ああ、いいぞ…くぁっ!」

《妊娠中に夫に浮気されないためのテクニック》
そう題された記事の内容は低俗を極めた。
あまえんぼさん、おくちのこいびと、おまたくにくに、尾てい骨責めetc…
明らかに偏ったプレイの数々をさして『どういったのが良いでしょうか?』と
聞いてきたときには目眩を覚えたものだ。

……その中でも、特に退廃性の高いコレを選んだ当の本人は他ならぬ真尋だが…。

「んあっはぁ、ちゅ…しょっぱいれふ…もにゅもにゅ」
「うあっ!はっ…!ああ!」
布一枚を隔てての愛撫に真尋のソレが一際派手に戦いた。

物理的な刺激は鈍化しているハズが、視覚的に訴えるものと
心理的な背徳感との総和が興奮を無限大に増幅させた。

血管の浮き出たグロテスクなものを…
真尋好みの清楚な下着が…
桃色の唇が拡がって…
ざらついた舌が…
その興奮が膨らんで…

「くあっ……出る!」
「へ?でる……って?」


483 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/22(土) 09:13:19.96 ID:EmQ8ZvGs
飛び散った分と、ニャルラトホテプの口に受けとめられた分と、ショーツに染み込んだ分と…。
ほんの数日前に、一滴も残らずに搾りあげたはずのそれは際限なく溢れ出た。

「はぅ……あぁ、すごい味です……」
舌に絡まる白濁を、眉根を寄せ嚥下するさまに、劣情が下半身をまた強張らせる。

「ニャル子……」
「八坂……さん」
「僕だけを見て」
「八坂さんがそれを望むなら……」
真尋はすぼまったその唇に、口づけた。

「……んちゅっ……れっ……ん……はぁ……んく、ん……」
絡め、吸い、移し、混ぜて、離れる。
「えへへ…しちゃいましたね…」
ニャルラトホテプははにかむと、その瞳を伏せた。
「八坂さんと、キス…」
「………」

「……八坂さん?」
「なんで…」
「え……?」
真尋の顔が絶望に歪む。

「なんで戻らないんだよ!」
「えっ…や、八坂さん?!」
「どうしてっ!記憶がっ!」
「痛いっ…!お願い、やめて…くださ…!」
「どうして、そのままなんだよッ!!」
「!!」

「……あっ」
真尋は、熱い左の頬に触れた。
ヒリつく痛みが、追ってくる。
ニャルラトホテプが泣いていた。

「あなたが見ていたのは……私じゃないんですね……」
「?!」

「ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げると、ニャルラトホテプは真尋の部屋を出ていった。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

493 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:29:04.24 ID:TEP7XJYN
『……私は全てのニャル子を、分け隔てなく愛しているだけ』
クトゥグアの言葉を思い出した。

真尋はニャルラトホテプを愛していた。
大胆不適な彼女を愛していた。
傲慢不遜な彼女を愛していた。
悪逆非道な彼女を愛していた。
専属警護な彼女を愛していた
料理上手な彼女を愛していた。
天真爛漫な彼女を愛していた。
全ての彼女を愛していた。

ずっと彼女だけを見ていた。

今のニャルラトホテプは本来の彼女ではない。
それでも……記憶が欠けただけの、紛れも無く、真尋にとっては愛しい少女だ。
『僕だけを見て』
そう言ったとき、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

なのに

『あなたが見ていたのは……私じゃないんですね……』
あの時の真尋は心の何処かで強く願ったのかもしれない。
『お前は消えろ』と。


494 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:31:01.17 ID:TEP7XJYN
「もし僕が、記憶喪失になって…別人みたいになっちゃったら、どうする…?」

真尋は努めて取り留めの無い風を装ってそう聞いた。
『そんなの決まっているじゃない…ヒロ君をもっかい育て直すだけよ♪』
頼子は事もなげにそう言うと、電話口で自分の戦果を自慢げにしゃべりはじめた。

『じゃあねヒロ君!明日のお昼には帰るわよ。お土産期待していてね~♪』
相変わらずの母の様子に真尋は苦笑いした。
結局ニャルラトホテプの事は言えなかった…いや、言うつもりもなかった。
ただ、母親に甘えたかったと言うのが本音だ。

「……うん。わかった…じゃあね」
『あっ…そうそう。ヒロ君?』
「……ん」
『誰かを傷付けたならまずは『ごめなさい』よ♪』
「……うん」
『素直でよろしい!』

真尋は通話の終わった携帯電話をしばし眺めると、シャワーを浴び、ベッドに横になった。


495 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:34:12.75 ID:TEP7XJYN
「……おはよう少年」

日曜日の朝。洗濯カゴの前でエンカウントした旧支配は、ブラジャーに鼻を埋めながら挨拶する。
大きさからしてクトゥグアのものではない…昨日のニャルラトホテプのものだ。
「……少年……賢しい子供は疎まれる」
「心を読むな」

はぁ、とため息をつくと顔を洗い、朝食を作る為に台所に立った。
良い匂いが居間を満たす頃には、わざとらしいタンコブを頂いたクトゥグアとハスター、シャンタッ君が食卓に着いた。


食事が始まってもニャルラトホテプは降りて来ない。
「どうしちゃったのかな」
と心配するハスターだったが、休日の遅めの朝食は
所謂朝の特撮タイムと重なったため、居候達の視線はテレビにくぎ付けとなる。

真尋は早めに食事を済ませると、作ったおにぎりを持って2階に上がった。


「ニャル子、起きてるか?」
ノックをするも返事はない。
きっかり十秒待ち、真尋はメタフィールド空間に繋がる扉を開けた。
「入るぞニャル子」

踏み入ったニャルラトホテプの私室は静まり返っていた。
何度も入った筈なのに、未だに部屋中に香る芳香を意識すると心拍数が早くなる。

「ニャル子、居るか?」
ベッドもキッチンも整えられ、テーブルには塵一つない。
主の見当たらない部屋を見渡した…後ろ手に扉を閉めると、
一階から響いていた特撮ヒーローの叫び声が消えた。
換わって聞こえてくる水音。

真尋はテーブルにおにぎりの乗った皿を置くと、その水音のする先へ…
自然と足音を抑えた忍び足になっていく。

音はニャルラトホテプの私室にあるシャワールームからだ。


496 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:38:06.41 ID:TEP7XJYN
カーテンを開けると水の砕ける音が大きくなった。
湿った空気が顔に当たる。
ガラス扉の向こうに屈んだ人影が見える。

『ぁっ……ぅ…はぁ…っ』
こぼれる水音に混じる声に真尋の心臓が早鐘を打つ。
《アナタガミテイタノハ……ワタシジャナカッタンデスネ……》

『ん……ぁっ……ぁ……ん』
薄い扉を隔てて聞こえるのは、啜り泣き…


いや、艶のある喘ぎ声だ。
幾度も身体を交わらせた真尋自身が良く知っている。
耳朶を打つソレに、粘性の高い唾液が口内を満たす。

自慰に耽るその肢体が磨りガラスの奥で官能的に揺れる。

『あぁっ……八坂さぁ……っ!』

真尋はガラス扉を引き開けた。
真っ白なシャワー室内ではワンピース姿のままシャワーのお湯に打たれて突っ伏したニャルラトホテプ。
両の手で秘部を愛撫するその姿に真尋は無意識に唾を飲んだ。

ぐっしょりと濡れたワンピースが華奢な身体に張り付き。
乱れた銀髪が水草の様にその身体に纏わる。
濡れそぼったショーツが細い指で擦りあげられ、その下にうごめく肉の形を見せている。

「やぁっ…だめぇ……やさかさん……」
潤みきった碧眼が真尋を見据える。
「ああっ!んっ!はぁ……見…て」
指の動きが早くなる。見上げる碧眼。
「私を…見てください……真尋…さん」

ニャルラトホテプが泣いていた。


498 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:45:35.04 ID:TEP7XJYN
真尋はニャルラトホテプを犯した。
精液の染みが浮いたショーツの隙間にペニスを突き挿れ、吸い付く肉ヒダに擦りつける。
ニャルラトホテプは激しい挿送に喉を反らせ、何度も達した。
「あぁ!あああぁ!!あぁぁあぁあぁあ!!!」
痙攣する膣内で太さを増したペニスが纏わり付くヒダを蹂躙する。
突き入れた亀頭が子宮口にぶつかる度に、結合部から濁った粘液が溢れ、
ショーツとズボンに糸を這わせた。
シャワーが流し落とす先から汗と涎と愛液と涙とが溢れた。

「すきっ!好きです……あ、ああぁあっ!……まひろ…さ」
正常位で繋がったまま、ニャルラトホテプは腰を振るのが窮屈なまでに身体を押し付ける。

「く…っ!う…っ!!」
一際深くに入れたペニスが震える。膣ヒダが一斉に粟立った。
真尋は余りの快感に腰を引き、熱い膣から抜け出たペニスが、瞬間、精液を盛大に爆ぜた散らした。

続く開放感。痙攣するペニスはとめどなく白濁液をニャルラトホテプの身体に放った。

「僕も…好きだから…大好きだから……」
真尋はニャルラトホテプに口づけた。

頼子に聞かずとも答えなぞとっくに出ていた。
真尋は《全てのニャルラトホテプを愛している》のだから。


499 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:48:23.60 ID:TEP7XJYN
「ごめん…ニャル子」

真尋は濡れた服を脱ぎ捨てると、横たわる肢体にその身体を被せ。
腕の中の温もりを味わう。

「ううん……私こそ、真尋さんに謝らないと……」
触れ合う肌と肌とが互いを求め、立ち上る香気が芳しく、愛おしい。

「謝る…?」
左頬の痛みを思い出すと同時に胸の痛みが蘇る。
「……全部。僕が悪いんだ……こんなに愛しているのに……あんな……」
抱きしめる腕に力が篭る。

「違うんです…」
両の手の平で薄い胸板を押され、真尋は抱擁を解いた。
まっすぐなその瞳を見据える。

「私は……私は、真尋さんを見ていました……ずっと……」

「私は、嘘つきなんです」

「あなたが私を求めてくれることに甘えて……私は……本当の私じゃ……ないのに」

それが彼女の罪ならば、
「ニャル子。大好きだぞ」
真尋はその罪ごとニャルラトホテプ愛していた。

「お前が僕を嫌いになっても。ずっと好きでいる」
「……私…わがままですよ?」
真尋はまた、愛してるとだけ言うと、その思いを心と身体に刻みつけるのだ。


500 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:54:12.83 ID:TEP7XJYN
合わせた唇は柔らかく、汗の匂いが芳しい。
互いの口内を行き来する舌の味わいに、視線が交わるだけで脳が焼ける。
《愛してる》
《好き》
《好き》
《大好き》
交わす言葉はそれだけだった。

熱くうねるその中で、幸せの内に真尋は果てた。

このままニャルラトホテプの記憶が戻らなかったらどうするか?
答えは頼子に聞く前からとっくに出ていた。

「真尋さん……幸せ過ぎて、赤ちゃんできちゃいます……」
「……ん。元気な子供を作ろうな……」
繋がったまま、また口づけを交わす。
失っただけなら、また作ればいいだけだ。と、

「えへへ……それじゃあ……」
「!?」
射精したばかりのペニスに、ぬめる膣肉がきつく絡みつく。
「まだまだ出してくれますよ……ね?」
すらりとした美しい脚が、ガッチリと真尋の腰をホールドする。
「うぁっ!ちょ…っ!いま、出したばかりっ!!無理!無理だって!!」
「真尋さぁん…そう言ってからが、ほ・ん・ば・ん」
あざとい上目遣いで真尋の胸板に浮いた珠の汗を舐めるニャルラトホテプ。
真尋のそれは瞬く間に最硬度に達する。

「にゃはッ!相変わらず、こうかはばつぐんですね~!」
「あ、相変わらず……って、お前……がぁ……くぁ!!」
痙攣する真尋に合わせてニャルラトホテプが恍惚の表情で達した。

「~~~っくはぁ……出ましたね……」
「はぁっ…はぁっ…お前…きおく…が…記憶…がぁ…」
「はて?きおく……?」
脱ぎ捨てられた濡れた服。
はだけられたワンピース。
精液と愛液でぐちょぐちょの結合部とショーツ。
「まぁ、状況は大体わかりました!」
「……あぁ、そうかい」

「そんな事より真尋さん!」
「………」
「『……ん。元気な子供を作ろうな……』ですと!!」
キラキラと輝く瞳に真尋はため息ひとつ。
「……はい…ニャル子との子供が欲しいです…」
「真尋さぁん!!」
吐き出しきった熱の塊の中で、またも絡みつくに膣壁に真尋のそれはいやも応もなく…
「好き!しゅき!だいしゅきですぅ!!」
「うぁああ!死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう……


501 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:57:02.63 ID:TEP7XJYN
手記はここで途絶えている……。


っと」

行儀悪く、もぐもぐとおにぎりをついばみながらニャルラトホテプがペンを走らせた。

「お前、さては面倒くさくなったな……」
《一滴残らず搾られた》真尋は、ベッドに大の字に倒れたままそう言った。
その様子をくつくつと笑うニャルラトホテプ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまです」

甘やかな香りが近付く、決して変わらないその匂いに真尋は幸福を噛み締めた。
ちょこんとベッドに降ろされた可愛らしいお尻。
真尋は迎え入れられるまま、柔らかな太ももに頭を預けた。

「……ねぇ、真尋さん?」
「……ん」
「私、最初の子は女の子が良いな」
「そうか」
「素直な子がいいです。何でも言うこと聞く、優しい子!」
「そうか」
「あ、けどそれじゃ皆に人気で、すぐお嫁にいっちゃうかも…」
「そうだな」
「やっぱりさっきのはなしです」
「そうか」
「う~~~~~~~~んと、我が儘な娘に育てましょう!」
「はいはい」

見上げたニャルラトホテプの頬っぺたには一粒の米粒。
おにぎりを食べながら『仕込んでいる』のを真尋は見ていた。
ちょいちょいと、頬っぺたを指差す真尋に、わざとらしく『取って』と顔を寄せるニャルラトホテプ。
真尋は、その米粒を舐め取った。


502 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2014/03/28(金) 23:57:56.99 ID:TEP7XJYN
「……少年のお母さん……この豆ご飯は何?」
頼子からのお土産であるレトロな携帯ゲーム機をピコピコとやりながらクトゥグアが聞いた。
「ピンク色のごはんなんてふしぎだね!シャンタッ君!」
「み~~!」
小動物コンビが頼子から渡された盆から器を配膳している。
「いやぁ。なんだか照れちゃいますね!真尋さん!」
真尋の隣でニャルラトホテプがニヤニヤと笑う。

その日の晩ご飯。
真尋は出された赤飯よりも赤い顔で、すき焼きを咀嚼した。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

以上。お目汚し失礼しました

  • 最終更新:2014-12-12 22:23:52

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