WIN-WINな関係なわけじゃないですか

WIN-WIN

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934 :名無しさん@ピンキー:2015/04/12(日) 20:42:12.83 ID:VWlGjmHh
「はい真尋さん、あーん」
「いいよそれくらい自分でできるって……」
朝から甲斐甲斐しく真尋のお世話をするニャルラトホテプ。
真尋がタチの悪い風邪を患って早三日。
ニャルラトホテプはこの調子で付きっきりで看病をしているのだ。

「お前学校行かなくていいのかよ」
「そんなことと真尋さんの看病とどっちが大事ってんですか」
「ああそういえばお前学生じゃなかったしな」
「クー子」
「少年はそんなに一生ベッドで過ごしたいの?私の生む機械になりたいの?」
「おっおい、病人に手を上げるのか?」





「なんて冗談ですよ。私が真尋さんに手を出すわけないじゃないですか。私には手を出してもいいですけど!」
「少年、これはジョーク」
「お前らが言うと冗談に聞こえないぞ……」

「でもそれだけ元気ならもう大丈夫みたいですね」
「ん……まあな。それにうちには母さんがいるから大丈夫だよ。だから僕の代わりに学校行ってきてくれ」
「真尋さんがそう言うなら……」
「……ニャル子。病人にあまり構うのはよくない。今日は少年をゆっくり休ませるべき」
二人の会話にクトゥグアが割って入る。
いつもは欲望に忠実なくせに珍しくまともな事を言う。

「それはそうですが……」
「少年、帰るまでにはニャル子を攻略しておくから安心してほしい」
「あんたなんかとは死んでもごめんですよ」
「少年、その後は私も攻略してもいいよ」
「はあ……」
前言撤回。
いつも通りのクトゥグアである。

「だからニャル子、一緒に学園生活をエンジョイしよ」
「真尋さん、何かあったらご用命下さい。光の速さで駆けつけますから!あぁん、まひろさぁーーーん」
クトゥグアに引きずられ真尋の部屋を後にするニャルラトホテプを真尋はただ眺めるしかなかった。

935 :名無しさん@ピンキー:2015/04/12(日) 20:44:35.84 ID:VWlGjmHh
「あら、おかえりなさいニャル子さん」
「ただいま帰りましたお義母様。真尋さんのご様子はいかがですか?」
「ええ、もうだいぶ良くなったみたい」
「よかった……」
学校から帰宅すると真尋の母が出迎えてくれる。
真尋のいない学園生活のなんと退屈なことか。
たった数時間会えないだけでもニャルラトホテプの心は靄がかかったように晴れないのだ。
こうして今授業が終わるや否やクトゥグアを撒いて家まで飛んで駆けつけた。



「お義母様、私真尋さんのお役に立てているでしょうか」
「あら、どうしたの急に」
「その……真尋さんが私のことをどう思っているのか、お義母様の目にはどう見えているのか知りたくて」
「そうねぇ……ヒロ君ね、ニャル子さん達が来てからいつもとっても楽しそうよ」
「そうですか……」
「ヒロ君はひとりっ子じゃない?それに私とあの人は家を空けることが多いから……ニャル子さん達が来て家が賑やかになったわ」
「……」
八坂頼子はまだ自分のことを義娘としては認めてくれないのだろうか。
所詮は八坂家に来た邪神その1ということなのだろうか。



「ヒロ君は恥ずかしがり屋だから口には出さないけど、きっとニャル子さんには特に感謝してると思うわ」
「えっ……」
「だからねニャル子さん。そんなに卑屈にならないで。ヒロ君のことを幸せに出来るのはニャル子さんしかいないんだから」
「お義母様……!」
「あらあら」
つい嬉しくなって真尋の母親に抱きついてしまった。
するとそれを優しく受け止めてくれる。
それにしてもなんという包容力を持っているのだろう。
その体に包まれると何故だかとても穏やかな気持ちになれる。
真尋が抱きつかれても嫌がらない気持ちも理解できる。

自分も母親になったらこんな風になることができるのだろうか。

「お義母様、私真尋さんのこと絶対に幸せにしますから!」
「ヒロ君のこと取られちゃうのはちょっぴり寂しいけど、宜しく頼むわね」
「はいっ、お義母様!」
「でもヒロ君はまだ未成年だから節度あるお付き合いをしなきゃダメよ?」
「!!!……はっ、はいぃ……」
まるで全て見透かされているかのようだった。
あとさりげに年齢を揶揄された気がする。

936 :名無しさん@ピンキー:2015/04/12(日) 20:46:01.39 ID:VWlGjmHh
「まひろさーん、あれ……お休み中でしたか」
真尋の部屋を訪れたニャルラトホテプ。
だが肝心の真尋は就寝中。
構ってもらえないことを寂しく思い、かわりに寝顔を堪能することにする。

瞳の閉じられた顔を覗き込むと本当に綺麗な顔をしている、とニャルラトホテプはつくづく思う。
その穏やかな寝顔を見ているだけでこの日一日の疲れも吹っ飛ぶ。

今はどんな夢を見ているのだろうか。
自分のことだったらいいのに。



キスくらいしてもばれないだろうか。

今まで懸命に尽くしてきたしこれ位のご褒美は許されるはずだ。
そうと決まればニャルラトホテプは早速行動に移す。

937 :名無しさん@ピンキー:2015/04/12(日) 20:47:37.51 ID:VWlGjmHh
「ちゅ……」
唇を重ねるだけの口づけ。
ニャルラトホテプの心はそれだけで満たされる。
これがあの時みたいに真尋からしてくれるものだったらどんなに幸せか。

「ん……ニャル子……?」
「あ……真尋さん、これはですね、もう熱はないみたいですね……、えっと、あー……ごめんなさい」
不意に真尋を起こしてしまった。
また真尋を呆れさせてしまう。
何故こうも自分の行動は裏目に出てしまうのか。
自責の念に駆られうつむいてしまうニャルラトホテプ。



「ん……いいよ別に。ありがとな、様子見に来てくれたんだろ?」
「ひゃっ!?あっはい、おかしいですね……真尋さんがやけに素直です」
だが返ってきた返事は意外なものだった。
その手はニャルラトホテプの頭を優しく撫でてくれるのだ。
「ん、何だ」
「いえ、なんでもありません。でってはこういうのはどうですか?」
今度は真尋の体を抱きしめる。
あくまで真尋を気遣い優しくだ。
我ながら大胆な行動に出たものだと思う。
こんなことをしてもツンの気が強いいつもの真尋なら恥ずかしがって跳ね除けるかフォークが飛んでくるのが関の山だ。




「っ……別に嫌じゃない」
「なっ!!!……まっ真尋さんもなかなか素直になりましたねぇ……いい心掛けです」
「違う……僕はずるいんだ」
「は……どういう意味ですか?」
「本当は僕も……ニャル子とこうしていたいんだ」
「!!!……でっでしたら私はいつでもウェルカムでしたのに」
「……でもニャル子はいつもふざけてるから、こんな事言うのが恥ずかしかったんだ。でも今は僕が弱ってるから、流石に変な事はしないだろうって思ってさ。卑怯だよな、こんな時に言うなんて」

938 :名無しさん@ピンキー:2015/04/12(日) 20:49:34.49 ID:VWlGjmHh
「なーんだ、そんなことでしたか」
「なんだとは何だ」
「私は真尋さんとイチャつきたい、真尋さんも私に甘えたい。つまりWIN-WINな関係なわけじゃないですか」
「でもなぁ……」
「それに、私は嬉しいんですよ。真尋さんが私への気持ちを言葉にしてくれて」
「……そっか」
そう、いくら真尋と付き合っているとはいってもそれはニャルラトホテプの愛に真尋が答えるというだけ。
真尋が自分から意思を示すということはほとんどなかったのだ。
その真尋が内心を吐露してくれたことがたまらなく嬉しかった。



「それに、真尋さんが本気で私のことを見てくれるなら、私もふざけたりしませんよ?」
「……信じていいんだよな」
「ええ、真尋さん、分かりますか。私今とってもドキドキしてるんですよ」
「うん……」
真尋には伝わっているだろうか。
真尋の体に胸を合わせると鼓動が早鐘を打つのが感じられる。
すると真尋もまたこちらを優しく抱きしめてくれる。

「ニャル子、顔真っ赤だぞ」
「真尋さんだって……」
真面目にしていれば真尋はもっと早く自分に向き合ってくれたのだろうか。
だがこれからは真尋は自分のことをちゃんと見てくれる。
現にこうして恥ずかしがりながらもこちらを見つめてくれるのだ。
今が良ければそれでいい、ニャルラトホテプはそうポジティブに考えることにした。


「ニャル子、改めてよろしくな」
「はい、まひろさぁん!」
「こら、もう離せよ」
「嫌です。絶対に離しません!」

つづく?

  • 最終更新:2016-01-05 22:25:36

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